BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

トライコームを増やすには?〜水やりの頻度を落として驚きの白さに?〜

この間までの長い梅雨の影響でうちのゴエリンギーはかなり徒長してしまいました。金髪の人が染め直さないで放置している「プリン」みたいな状態ですね、、、、。

 

梅雨の期間中に成長した部分は見事にトライコーム(トリコーム)がありません。元気に育ってくれているだけで嬉しいのですが、やはりかっこ良く育てたいという欲が出てしまいます。今回はトライコームを復活させるにはどうしたらいいか色々調べたので、この記事でまとめていきたいと思います。

 

 

 

トライコームの役割とは

Molecular basis of natural variation and environmental control of trichome patterning(2014)によると、トライコームの役割は

  • 蒸散の抑制(気孔と大気の間の境界面を増大させ、水蒸気が体外に出るのを防ぐ)
  • 二酸化炭素の漏れ出しを防止
  • 過剰な光によるダメージと温度上昇を防ぐ
  • トライコームにフラボノールを蓄積して紫外線から守る
  • 寒さから守る(冬になると動物が毛をたくさん生やすのと同じ原理)
  • 重金属をトライコームに蓄積させて重金属の毒から身を守る
  • 病原菌が体内に侵入するのを防ぐ

など色々あるようです。ただ、植物種によってはその限りではなく、上記の役割が否定されているものもあります。それについては後述しようと思います。このようにいろんな役割を持っているトライコームですが、どうすれば、植物にたくさんトライコームを作らせることができるのでしょうか。

 

トライコームの合成を誘導するには

確実にわかっていることとして、

  1. 植物ホルモンの「ジベレリン」がトライコームの形態形成を促進させる(GL1という遺伝子を発現させることによって)
  2. 傷害や昆虫の攻撃によってトライコームの合成は誘導
  3. 傷害や食害に関する植物ホルモン、ジャスモン酸とサリチル酸によっても影響を受ける(ジャスモン酸がトライコーム合成を促進させ、サリチル酸は抑制する。)
  4. 紫外線によってトライコームの合成が促進

が挙げられます。1~3番目の誘導方法はホルモンをいじったり、植物を傷つけたりしなければならず、実用的ではありませんね。となると、実践できそうなのは、4番目の「紫外線によってトライコームの合成が促進」でしょうか。しかし、この根拠となる研究ではシロイヌナズナを使っているので、私が育てている植物(ブロメリア、アガベ、パキポディウムなど)にも当てはまるかは不明です。もしかしたら、私が育てているような植物を使ってトライコームの研究をしている論文があるかもしれない!ということで、またまた調べてみました。

 

ブロメリアのトライコームに関する論文をいくつか調べてみた

ブロメリアのトライコームに関する論文をざっくり調べると2本見つかりましたので、簡単に紹介しようと思います。

まず1本目。

Hydrophobic trichome layers and epicuticular wax powders in Bromeriaceae  (2001)

いろんなブロメリア科の植物でのトライコームの機能について調べた論文。これによると、

  • トライコームやワックスは光を反射させるものの、光によるダメージを軽減させるほどではない。
  • 800nm以上の波長は40〜50%くらい反射させていた。
  • 葉表面のトライコームやワックスは病原菌から身を守る効果がある。
  • 葉表面のトライコーム・ワックスは疎水性なので、水を弾いて、植物体をきれいに保つ。
  • タンク系ブロメリアにおいて、葉の内側に生えている親水性トライコームが水やミネラルの保持に役立つ。

ということは、初めに書いたトライコームの役割のうち、「過剰な光によるダメージと温度上昇を防ぐ」効果はない、ということになります(もちろん、ブロメリア科の植物においてはの話ですが。)。

 

2本目

Foliar trichomes, boundary layers, and gas exchange in 12 species of epiphytic Tillandsia (Bromeliaceae) (2006)

ティンジア属のトライコームの機能を調べた論文。

結論から言うと、チランジア属における蒸散抑制の影響は否定されているっぽい。この論文によれば「トライコームは、確かに気孔と大気の間の境界面を増大させているが、蒸散を抑制させるかどうかは怪しい。」とのこと。

この論文によって、ティンジア属において、初めに書いたトライコームの役割のうち、「蒸散の抑制」も怪しくなってきました。うーん、一体何が正解なんだ??

この2本の論文からわかることを改めて整理すると、

  • トライコームが光を反射させるのは間違いないが、過剰な光によるダメージから守ってくれるわけではない。
  • 大気と気孔間の境界面を分厚くしてくれるが、そこまで蒸散を防いでくれるわけではない。

UVとトライコームの関係について調べた論文は 2012 年の研究なので、まだ信用できる気がする。以上を踏まえ、私なりにトライコームの役割を考察してみました。

 

BBYが考察するトライコームの役割

今まで書いてきた通り、トライコームの役割として考えられている「蒸散の抑制」や「過剰な光によるダメージの軽減」はそんなに効果がないような気がします。ブロメリア科の植物は、多くがCAM型植物で、日中は気孔を閉じているはずです。CAM型植物は乾燥に耐えることに特化した植物なので、できる限り水の損失を避けたいのではないかと考えました。植物が水を失う機会は大きく2つあります。1つ目は「気孔からの蒸散」で、2つ目は葉の表面から水が蒸発する「クチクラ蒸散」です。葉の表面には「クチクラ」というワックス状の物質が形成されており、水はほとんど通ることができません。しかし、クチクラ層のちーっちゃい隙間を通って、水は蒸発しています。その蒸発量は植物全体の蒸発量の1割を占めるとか。全体の1割となったら、CAM植物からしたら見過ごせない値かもしれません。ということで、私の結論は、

ブロメリア科の植物は表皮にトライコームを形成して、クチクラ蒸散を抑えている。

そして、トライコームを形成させるには、

水やりの頻度を下げる。(もちろん、紫外線や強光でも誘導される可能性はあります。)

 水やりの頻度は下げすぎると枯れてしまうと思うので、塩梅がなかなか難しいです。こればっかりは経験が必要ですねー。今は用土表面が乾いて1〜2日後を目安に水をあげています。(植物体の様子を見ながらですが。)何か目安になりそうなものがあれば是非教えて欲しいです。そして、現在のゴエリンギーの様子は、

 うーん、、、トライコームは復活してませんね、、、。どうしたら良いものか。

参考

論文

Molecular basis of natural variation and environmental control of trichome patterning (2014)

Hydrophobic trichome layers and epicuticular wax powders in Bromeriaceae (2001)

Foliar trichomes, boundary layers, and gas exchange in 12 species of epiphytic Tillandsia (Bromeliaceae) (2006)

The responses of trichome mutants to enhanced ultraviolet – B radiation in Arabidopsis thaliana (2012)