BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

Agave titanota ‘Compacta’ 生育記録 Vol.1 (2021年2月〜2022年5月まで)

 Agave titanota ‘Compacta’ の生育記録です。1ヶ月ごとに定点写真を撮り、成長の様子を記録しています。皆様の生育の参考になれば幸いです。

 

Agave titanota ‘Compacta’ について

Agave titanota といえばメキシコ原産ですが、 Agave titanota ‘Compacta’ は子株、もしくはクローンで増やしたものが市場に出回っているものと思われます。

また個人的に、Agave titanota "Compacta" は「titanota」というよりか「oteroi」のドワーフ(遺伝的に小さい)個体だと思っています。葉が青っぽいことと、鋸歯が大きいっていうのが理由です。*1
(↓こちらに 「titanota」と 「oteroi」の違いを書いてあるのでよろしければどうぞ。↓) bambooborny.hatenablog.com

Agave titanota ‘Compacta’ 2022年6月11日撮影。

上から見た様子。2022年6月11日撮影。

横から見たようす。

鋸歯もなかなか立派です。

名前の通り矮性個体(ドワーフ:小さい個体)なので、他の Agave titanota よりも小さいです。

Agave titanota ‘No.1’ とのサイズ比較。上から見たようす。
左:Agave titanota ‘No.1’        右:Agave titanota ‘Compacta’

Agave titanota ‘No.1’ とのサイズ比較。横から見たようす。
左:Agave titanota ‘No.1’        右:Agave titanota ‘Compacta’

 

アガベ系の生育方針

BBYが考えるアガベ系生育方針の要点は

Agave 生育方針
  • UVBをできるだけ照射する。
  • UVBの照射量が多い時に水をやり、成長させる。
  • UVBの照射量が低い冬は水をあげないようにする。
  • 昼夜の温度差を大きくする。
  • 耐寒性は5℃程度なので、最低気温が 0℃を下回る日は屋内に取り込む。

 

bambooborny.hatenablog.com

bambooborny.hatenablog.com 

bambooborny.hatenablog.com

これらの要点を踏まえて育てたい。しかし、ここにある要点を全て揃えるのは難しいですねー。できるだけ網羅できるようにしたいところです。

生育記録

2021年2月末に地元の植物店で購入しました。そこから1年3ヶ月後の2022年5月末までの生育記録を記します。

1ヶ月ごとの様子を定点撮影し、各月の環境や水やりなどを一緒に載せています。各月の詳細は「◯月の詳細」から見ることができます。

※詳細な生育記録は3月の途中からとなっています。

※日照時間や降水量のデータは、住んでいる地域から少し離れた観測所からのものなので、実際の天候と多少ズレがあります。あらかじめご了承ください。

 お迎え時の姿

2月末に地元の植物店で購入しました。

小さくて可愛い。しかし、葉の縁にはとてもイカつい鋸歯が。このアンバランスさたるやmini grammer の如し。

3月末のようす
3月の環境詳細~夜はまだまだ寒かった3月~

3月15日までは屋内で LED を使って生育していたと思います。16日から屋外で管理を始めました。

3月の環境

3月の日照時間と降水量

〜屋内の管理情報〜

【使用LEDライト】 EnFun LED 120W つまみを 5 にセット
【ライトとの距離】 鉢から 40 cm、中心から2~3 cm ほどズレた所
【PPFD 値(推定)】 1200 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【その他】卓上扇風機で送風

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左:お迎え時。 右:3月末の姿。

変化した点といえば、

  • 少し黒っぽくなった。
  • 新しい葉が開いてきた。

の2点ですかね。

新しい葉が開いてきてるのは、順調に成長している証拠かな?とりあえず安心です。
葉が黒っぽくなったのはアントシアニンが蓄積したからでしょう。過去記事でも触れていますが、アントシアニンは青色光、UVA、UVBにより蓄積誘導されるようです。他にも乾燥ストレスにより誘導されることが知られています。

Transcriptomic and metabolomic studies carried out on Arabidopsis plants confirmed that enhanced flavonoid accumulation under drought stress is very helpful to provide resistance.
シロイヌナズナを用いたトランスクリプトーム解析やメタボローム解析の結果、乾燥ストレス下でのフラボノイドの蓄積は耐性の付与を助けることが確認された。)
出典:Response of Phenylpropanoid Pathway and the Roleof Polyphenols in Plants under Abiotic Stress (A. Sharma et al., 2019)

アントシアニンはフラボノイドの一種です。Agave titanota "Compacta" が黒くなったのは他のフラボノイドかもしれませんね。

私も学生時代、植物の乾燥ストレスに関する研究をしていました。植物体に乾燥ストレスを与えると明らかに葉の色が赤黒っぽくなったのを覚えています。
今回のアントシアニン蓄積は強光、乾燥ストレスの両方で起きたような感じでしょう。

3月28日は雨ざらし状態で外に放置しました。「成長点に水がたまると良くない」ということがネット上で書かれているのを良く見るので、少し怖かったのですが、現状具合を崩すことはありませんでした。水が溜まった状態が続くのが良くないってこと?

 

 

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4月末のようす
4月の環境詳細~気温差バッチリの4月~

基本的に屋外管理を継続しました。晴れた日は放射冷却により、昼夜の気温差が大きくいい感じでした。水やり回数は雨ざらしの日を除いて4回。

4月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

4月の日照時間と降水量

〜屋内の管理情報〜

【使用LEDライト】 EnFun LED 120W つまみを 5 にセット
【ライトとの距離】 鉢から 40 cm、中心から2~3 cm ほどズレた所
【PPFD 値(推定)】 1200 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【その他】卓上扇風機で送風

3月末に展開しかけていた葉は完全に開き、次の葉も開きかけています。1ヶ月で丁度葉を1枚展開させた感じですね。葉色は黒から綺麗な緑色になり、厚さもましたように見えます。

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5月末のようす
5月の環境詳細~いい天気が続いた5月~

いい天気が続いた5月でした。最低気温は前月と比べて 5℃ 近く上がり、植物にとっては理想的な気候だったのではないでしょうか。この月も基本的には雨ざらしで管理しました。とはいえ、大雨が続きそうな時は室内に取り込みました。

5月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

5月の日照時間と降水量

〜屋内の管理情報〜

【使用LEDライト】 EnFun LED 120W つまみを 5 にセット
【ライトとの距離】 鉢から 40 cm、中心から2~3 cm ほどズレた所
【PPFD 値(推定)】 1200 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【その他】卓上扇風機で送風

中心点から新たな葉が2枚ほど顔を覗かせています。個人的には、形もそこまで崩れずいい感じだと思っております。

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6月末のようす
6月の環境詳細~梅雨入りした6月~

6/14 に梅雨入りしました。梅雨入り後は曇りや雨が多かったです。先月同様、基本的には雨ざらしで管理しました。

6月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

6月の日照時間と降水量

〜屋内の管理情報〜

【使用LEDライト】 EnFun LED 120W つまみを 5 にセット
【ライトとの距離】 鉢から 40 cm、中心から2~3 cm ほどズレた所
【PPFD 値(推定)】 1200 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【その他】卓上扇風機で送風


梅雨入りしても特に形が崩れることはなく、いい感じで成長しておりました。

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7月末のようす
7月の環境詳細~待望の梅雨明け&最高の日差し~

 

ようやく梅雨が明け、7/10 から屋外管理に移行しました。梅雨明けからは好天が続き、‘Compacta’ にとっては最高の気候でした。晴天が続いたので、水やり回数が多かったです。

7月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

7月の日照時間と降水量。

前月に比べ、葉色の緑が少し薄くなりました。強い日差しを浴び続けたからでしょうか。葉の厚さも少し薄くなったように見えます。

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8月末のようす
8月の環境詳細~気温・日差しともに最高の8月~

屋外管理を継続しました。2021年の8月は暑かったですねー。アガベにとっては稼ぎ時の1ヶ月。たくさん日差しを当てて、たくさん水やりをしました。ちょうど手の空くお盆時のみ雨。なんでやねん。

8月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

8月の日照時間と降水量

〜屋内の管理情報〜

【使用LEDライト】 EnFun LED 120W つまみを 5 にセット
【ライトとの距離】 鉢から 40 cm、中心から2~3 cm ほどズレた所
【PPFD 値(推定)】 1200 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【その他】卓上扇風機で送風

この月も順調に生育。少し、上に伸びてきたかな?

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9月末のようす
9月の環境詳細 ~まだまだ暑かった9月~

9月といえど、まだまだ暑い日が続きました。ただ、雨が多かった、、、。引き続き屋外で管理。

9月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

9月の日照時間と1日の合計降水量

〜屋内の管理情報〜

【使用LEDライト】 EnFun LED 120W つまみを 5 にセット
【ライトとの距離】 鉢から 40 cm、中心から2~3 cm ほどズレた所
【PPFD 値(推定)】 1200 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【その他】卓上扇風機で送風

この月も順調。いい感じっす。

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10月末のようす
10月の環境詳細 ~一気に気温が下がった10月~

基本的に屋外管理を継続しました。22日以降、気温がガクッと下がりました。

10月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

10月の日照時間と降水量

〜屋内の管理情報〜

【使用LEDライト】 EnFun LED 120W つまみを 5 にセット
【ライトとの距離】 鉢から 40 cm、中心から2~3 cm ほどズレた所
【PPFD 値(推定)】 1200 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【その他】卓上扇風機で送風

9月に開きかけていた葉が開いたものの、春・夏のような成長スピードは無いですね。前月同様、10月も縦に伸びた感じがします。

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11月末のようす
11月の環境詳細 ~屋内に取り込んだ11月~

11月下旬、いよいよ寒くなったきたので、水やり回数をかなり減らしました。雨も少なく、冬に近づいてる感じがしました。

11月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

11月の日照時間と降水量

気温が下がったからか、水やり回数が少なかったからか、ほぼ動きがありません。中心点が少し盛り上がった程度ですね。

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12月末のようす
12月の環境詳細 ~完全に休眠管理だった12月~

流石に寒くなってきたし、UV の強さも落ち着いてきたので、6日から室内で管理しました。室内に取り込んでから、水やりは一切せず。光も廊下の窓から自室に入ってくる木漏れ日のみ。

LED で下手に成長させるより、現状維持したまま待つ方が形が崩れないだろうと考えたからです。

12月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

12月の日照時間と降水量

〜屋内管理の情報〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

完全に成長が止まっています。狙い通り。

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2022年 1月末のようす
1月の環境詳細 ~完全に休眠管理だった1月~

12月に引き続き、室内で管理しました。水やりは一切せず、光も廊下の窓から自室に入ってくる木漏れ日のみ。所々、最高気温が20℃ を超えている日がありますが、エアコンをつけたからです。私が自室にいない時は高くても 12 ~ 13 ℃ 程度だと思います。

2022年1月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

〜屋内管理の情報〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

1月も変化なし。いいぞー。

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2月末のようす
2月の環境詳細 ~屋外管理に移行した2月~

少しずつ気温も上がり始めた26日から日中のみ屋外管理に移行しました。

2月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2月の日照時間と降水量

〜屋内管理の情報〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

ほんのすこーし動き始めました。

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3月末のようす
3月の環境詳細 ~春!3月~

13日までは日中のみ屋外管理をし、14日からは終日屋外管理にしました。まだまだ寒かったので、雨ざらしにするのは控えました。

2022年3月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2022年3月の日照時間と降水量

〜屋内管理の情報〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

屋外管理に移行したものの、まだまだ寒いからか、成長スピードが鈍いですね。

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4月末のようす
4月の環境詳細 ~暖かくなり始めた4月~

基本的に屋外で管理しましたが、雨が降った時は室内に移動させました。

2022年4月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2022年4月の日照時間と降水量

〜屋内管理の情報〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

水やり回数が少なかったのか、4月もそこまで成長しませんでした。

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5月末のようす
5月の環境詳細 ~急に暖かくなった5月~

基本的に屋外で管理しましたが、雨が降った時は室内に移動させました。

2022年5月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2022年5月の日照時間と降水量




 

うーん、去年より明らかに成長速度が遅い。2021年5月の水やり回数は6回。対して2022年5月は4回。水やり回数に大きな差は無いので、根が張りすぎているのかもしれません。植え替えを検討せねばなりませんね。

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まとめ

左:2021年4月  右:2022年5月

こう見るとかなり成長しました。まず、葉色が大きく変わりました。1年で色がかなり薄くなりました。

次に葉の形です。昨年は細長い葉をつけていましたが、成長するにつれ、丸くなってきています。

左:2021年4月  右:2022年5月

次に鋸歯の大きさについて。やはり新しく展開した葉ほど、鋸歯が大きいように思います。

左:2021年8月に展開した葉
右:2022年5月に展開した葉

ただ、葉の面積に対する鋸歯の割合としては、お迎え当時の方が高かった気もします。

最後に、最近の悩み。黒い斑点が随所に見られます。

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これ何なのでしょう?詳しい方、教えていただけると非常に嬉しいです。

というわけで、約1年の成長記録でした。

参考

 【論文】

Response of Phenylpropanoid Pathway and the Roleof Polyphenols in Plants under Abiotic Stress (A. Sharma et al., 2019)

*1:BRUTUS特別編集 合本 真・珍奇植物 p.100~101