BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

Othonna Clavifolia (オトンナクラビフォリア) の生育記録とBBY流の育て方 Vol.1

Othonna clavifolia(オトンナ クラビフォリア)の生育記録です。

 

Othonna Clavifolia について

種の特徴

キク科オトンナ属の低木(灌木)です。

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我が家の Othonna clavifolia 2020/11/8 撮影。

多肉質の葉が棍棒のように見えることが名前の由来だそうで*1、正に「珍奇」な植物です。

海外のサイトに Othonna 属について詳しく記載されているものがあるので、参考にしてみます。

www.africansucculents.eu

このサイトによれば、Othonna 属は世界で100種ほど確認されており、多くが南アフリカの冬の降雨地域に分布的しているようです。

This genus of more than 100 species are confined to mainly the winter rainfall areas of Southern Africa, in Nothern and Western Cape as well as the south- western section of Namibia.
出典:http://www.africansucculents.eu/informations/othonna.html

 

自生地とその環境

ナミビア~ 南アフリカの沿岸側に多く分布しており、自生地の様子を見る限り、標高 100 ~200 m 付近の丘の上に生えていることが多いです。

参考:https://www.gbif.org/ja/species/3094365

自生地付近でストリートビューができるところを探してみると「アレクサンダーベイ」という街がありました。早速みてみると、

こんなところで生きているとは、、、。かなり過酷そうな環境ですね。

環境を調べてみようとしましたが、気象庁には「アレクサンダーベイ」のデータがありませんでした。代わりに、一番近くの「スプリングボック」のデータを見てみることにします。

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スプリングボックの 2020 年 月統計値。

このグラフを見ると、

4月〜9月 (雨季)→ 気温が低く降水量が多い
10月〜3月(乾季)→ 気温が高く降水量が少ない

ということがわかります。

続いて 4 ~ 9月(雨季)の平均気温、最高・最低気温の平均を見てみます。

【平均最高気温】21.03 ℃(最高値は4/3の32℃)
【平均最低気温】10.73 ℃(最低値は8/30の0.4℃)
【平均気温】15.86 ℃

雨の降った日数は28日!
単純計算で6日に1度雨が降る計算です。

続いて10 ~ 3月(乾季)。

【平均最高気温】27.90 ℃(最高値は1/30の38℃)
【平均最低気温】14.73 ℃(最低値は10/10の5.1℃)
【平均気温】21.31 ℃

雨の降った日は6日!
まさに乾季って感じです。

ここまでのまとめ
  • 気温が高く、降水量(湿度)が低い乾季と、
    気温が低く、降水量(湿度)が高い雨季に分かれる。
  • 雨季の平均気温は 15.86 ℃ と日本の春・秋と同程度の気温帯。

以上をもとに生育方針を考えます。

生育方針

光量、日照時間など

自生地を見る限り、Othonna Clavifolia はほとんど日差しを遮るものがない場所で生育しているので、屋外管理の際は直射日光で問題ないと思います。(発芽してすぐの場合や、長期間弱光下で管理していた場合を除く。)

LED で管理する場合は 400 μmol m-2s-1 以上あった方ががっちりと育ってくれそうです。

bambooborny.hatenablog.com

ただ、「夏の直射日光は良くない」と記載しているサイトが。

Othonnas tend to be fairly hardy … In summer protect plants from direct sunlight.
(Othonna 属は頑丈なものが多いです … 夏には、直射日光から植物を守ります。)

出典:http://www.africansucculents.eu/informations/othonna.html

 こちらのサイトにも同様の記載が。

worldofsucculents.com(文章が完全に一致している部分があります。どっちかコピペした?笑)

だがしかし!成長期へのスムーズな移行を果たすため、私は夏も直射日光に当てています。

室内管理時の日照時間に関して。基部(株元)の枝分かれを防ぐため、長日条件(12時間以上)にしています。

bambooborny.hatenablog.com

水やり

自生地の環境から察するに、Othonna clavifolia は乾燥に強そうです。

成長期(ここでは葉が茂っている時期とします。)には、表面の用土が乾いてから 2 ~ 3 日後に水やりをしています。

休眠期(落葉している時期とします。)は、基本的に水を与えないようにしようと思います。

In the warmer months, Othonnas go into their dormancy period. Stop watering, place them in a shaded, cooler area, away from getting direct sunlight, relatively dry and with good air circulation.
(暖かい時期になると、Othonna 属は休眠期に入ります。水やりをやめ、日陰の涼しいところで、直射日光を避け、比較的乾燥しており、空気循環があるところにおいてください。)

出典:How to Grow and Care for Othonna | World of Succulents

温度

「自生地とその環境」でまとめた通り、 雨期の平均気温は15.86℃ ですが、成長期へのスムーズな移行を促すため真夏も外で管理します。

 逆に霜などによる冷害対策のために、外気温が氷点下になる前に室内へ取り込むようにしています。

 

お迎え時の姿 ~ 2月末までの生育記録

2020年10月18日、千葉県木更津市で行われたチョトチョットマーケットというイベントにて、Othonna herrei と共にお迎えしました。

 (左が Othonna clavifolia 、右が Othonna herrei 。)

2021年2月までは、細かい記録を取っていないので、ダイジェストでお送りします。

お迎え時〜2月末までの生育記録


11月末まで、日中は屋外の無遮光管理、日没後は室内に取り込み、19時までLEDライトの光を照射させていました。

この時期は旺盛に新しい葉を作っていました。ただ、LEDで長時間光を照射していた or 湿度が低かった、というのが原因なのか、葉にアントシアニンが貯まっていました。

12月から完全に室内管理に移行しました。夜の低温を避けるためです。

以降、2月末まで室内管理を継続させました。当時の写真がないので詳しい事は書けませんが、1月以降は成長がかなり鈍化していたように思います。葉の赤みもだいぶ進行してしていたかな。(><)

 2021/2/25 から屋外管理に戻しました。

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一番手前が Othonna clavifolia 。

屋内の環境が合っていない感じがしたのと、屋外の気温が少しずつ上がってきたというのが理由です。

実はこの時、画像一番奥の Othonna euphorbioides が猛烈なハダニ被害にあっていまして。外に出したこのタイミングで、Othonna 属にまとめて「ダニ太郎」を散布しました。

21年3月~22年6月末までの生育記録

2021年3月から、定点撮影をして1月ごとの様子を撮影しました。気温、湿度も記録を取り、成長度合いと環境の相関があるかを調べられるようにしました。

管理カレンダー

21年3月 ~ 9月まで屋外で管理しました。夏も直射日光をガシガシ当てました。
※屋外管理の際、雨が続くときなどは室内(植物棚 or 無LED & 無加温)に入れて管理しました。

各管理の詳細はこちら

屋外管理

ベランダの外側に自作の棚を作り、そこで管理しています。エキスパンドメタルを敷き、通気性をあげております。2階なので、風通りは良いかと。

屋外管理で使用している植物棚。

外側につけているので、日当たりも良好。季節にもよりますが、5~17時の間は直射日光が当たります。

 

屋内管理(室内の植物棚)

我が家の植物棚の風景。

〜〜〜屋内管理(植物棚)の詳細〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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3月末
3月の詳細

環境の計測を始めたのが、3/16 からなので、それ以前のデータがないです。ただ、平均気温は約17℃とかなり良さげでした。

3月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

3月の日照時間と降水量

葉は青々としていてぷっくりと膨らんでいます。

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4月末
4月末の環境詳細

比較的、晴れの日が多かった4月。25℃を超える日があれば、最低気温は5℃を下回る日もあり、気温差が激しかったです。

4月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

4月の日照時間と降水量

〜〜〜その他の環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

3月に比べ、葉色が少し青く(白っぽく)なりました。

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5月末
5月末の環境詳細

最低気温が5℃近く上がり、暖かくなりました。

5月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

5月の日照時間と降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

花芽は完全にしおれ、葉の緑色はかなり薄くなってしまいました(>_<)

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6月末
6月末の環境詳細

気温は順調に高くなりましたが、梅雨時期で雨が多かったです。。

6月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

6月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あまり大きな変化は見られません。落葉することは無いですが、休眠モードなのでしょうか。

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7月末
7月の環境詳細

気温はさらに高くなりました。梅雨明けした11日からいい天気が続きました。

7月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

7月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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なんということでしょう!新葉が現れました!(幹のすぐ上のところ)真夏の盛りに、、、とても興味深いです。

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8月末
8月の環境詳細

7月と同様に気温・湿度が高かったです。

8月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

8月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、中心から約 10 cm
【PPFD 値(推定)】 100 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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他のところからも新葉が!休眠期間は終わったということでしょうか?

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9月末
9月の環境詳細

少しづつ暑さが和らいできた9月。8月から3℃くらい涼しくなりました。

9月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

9月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ真下
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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気づけば右側の枝がかなり伸びました。新葉も増え、全体的に緑が増えたように思います。この頃にしおれて茶色くなった葉をむしったので少しスッキリしました(^^)

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成長まとめ

21年3月末と9月末を並べるとこんな感じでした。

21年3月(左)と21年9月(右)の比較

幹が明らかに太くなりました。また、右側に枝が伸びてきました。夏に葉色が薄くなりましたが、新葉は3月と同じ緑色です。一安心。

一応、各月の写真をまとめ、幹の肥大率を見てみます。

2021年3 ~ 9月 成長の軌跡

2021年3月 ~ 9月 幹肥大率

肥大率を見ると、3 ~ 5月の成長率が高いですね。そして、休眠したと思われる6月以降も成長は続いていました。

3月 ~ 9月の雑感

2021年3 ~ 9月で感じたことをザックリ書きます。

葉が赤くなった理由

写真はありませんが、2月末までの室内管理時は葉が赤くなっていました。

Othonna clavifolia が葉を赤くする原因は、

  1. 長時間の光照射
  2. 赤外線を含まない強光の照射
  3. 高い気温

のどれかだと考えられます。
1. に関しては、受ける光の量が純粋に多すぎたために、葉が赤くなった、という理屈です。

2. に関して。赤外線には「エマーソン効果」といって、光合成を助けるはたらきがあることがわかっています。赤外線を浴びたことにより、受ける光の許容量が増えたため、葉が赤くならずに済んだのではないか、という感じです。

3. に関して。Othonna clavifolia は涼しい時期に成長する植物なので、気温が高いと、生命活動、中でも光合成のはたらきが鈍ることで、葉が赤くなったのではないか、ということです。

うーん、どれかはわかりませんが、観察を続けて結論を出したいものです。

休眠の引き金は?

休眠の引き金になるのは何の環境要因でしょうか?

  1. 日中の気温上昇
  2. 日中の光強度の増加
  3. 湿度の低下
  4. 夜温の上昇
  5. 灌水頻度

参考にした海外のサイトには、「夜温の低下により休眠が終了し、新しい葉をつける。」と書かれています。

In the fall, sometime around early to mid october when nights cool down, the plants may start growing on their own, but a good soaking will help them to leaf out.
(秋、夜温が下がってくる 10 月の初〜中旬になると、成長を始めますが、より良い水やりが葉を出すのを助けます。)

出典:http://www.africansucculents.eu/informations/othonna.html

 

これを考慮すると、夜温の上昇により休眠が誘導されることになります。上の候補でいうと 4. ということになりますが、果たしてどうでしょう?

個人的には「3. 湿度の低下」も大きな要因になりうると考えています。
自生地は 10 ~ 3 月に暑く、雨の少ない乾季が訪れます。乾燥した空気により、ABA レベルの上昇 → 休眠の誘導 なんてことがあるかなーと思っています。

今後も楽しみですな。

その後の記事はこちら。

bambooborny.hatenablog.com

 

参考

【Web】

isla del pescado - Othonna clavifolia-オトンナ・クラビフォリア

http://www.africansucculents.eu/informations/othonna.html

Othonna clavifolia Marloth

How to Grow and Care for Othonna | World of Succulents

https://www.researchgate.net/profile/Sonja-Loots-3/publication/261636778_A_Red_Data_Book_of_Namibian_Plants/links/564996fc08ae451880aee832/A-Red-Data-Book-of-Namibian-Plants.pdf