Agave titanota 周りで、よく目にする名前が、「titanota」「oteroi」「No.1」です。見た目は似ているのに、この 3 つの名前が入り乱れています。
本記事では、これら 3 つの名前の区別から始まり、3 つの名前が混同されてしまうことになった経緯をまとめました。
※BBYの推測が含まれます。ご了承ください。
- Agave 「titanota」? 「oteroi」? 「No.1」?
- Agave titanota と Agave oteroi が混同されてきた経緯
- Agave titanota ' No. 1 ' という名前の由来
- 「Agave titanota 'No.1' は 2019 年以前に 日本に輸入された Agave oteroi の総称」説
- まとめ
- 参考
Agave 「titanota」? 「oteroi」? 「No.1」?
「titanota」と「oteroi」は学名の一部です。正確には、種小名というものです。学名は「属名 + 種小名」で表す決まりになっています。例えば、ヒトの学名は「Homo sapiens」ですが、「Homo」が属名、「sapiens」が種小名ということになります。
つまり、Agave titanota と Agave oteroi は別の生き物ということです。身近な例でいうと、イヌとオオカミみたいなものです。
titanota ‘ No. 1 ’ の「No.1」は品種名を表します。
‘ 白鯨 ’ ‘ Black & Blue ’ ‘ 姫巌竜 ’ ‘ Red Cat Weazle ’ なども品種名、もしくは個体名ですね。コメで例えると、「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」のようなものです。
ちなみに、学名に品種名をくっつけて記す時は、単一引用符 『 ‘ ’ 』 で囲む決まりになっています。
Agave titanota と Agave oteroi が混同されてきた経緯
さて、Agave titanota ‘ No. 1 ’ について調べると、色々な用語が出てきます。例えば「ランチョタンバー系」や「シエラミクスティカ系」、「FO-076」などなど。
これらの用語を理解するため「 Agave oteroi が Agave titanota として認識されていた問題」を時系列順に辿っていこうと思います。
1982年 ~Agave titanota の発見~
ハワード・ジェントリー氏がメキシコのRancho tambor(ランチョタンボール)にて、新種の Agave を発見。Agave titanota と命名される。
【自生地】
メキシコのRancho tambor(ランチョタンボール)
【特 徴】
葉は細長い卵型、もしくは幅広いやり状の形をしている。色は青白、もしくは青緑。
1984年 ~Agave sp. ‘FO-076’ 誕生~
シードコレクターであるフェリペ・オテロ氏がメキシコの Sierra Mixteca (シエラミクスティカ)という地で Agave の種を採集する。彼のコレクションナンバー‘FO-076’ をつけ、コレクターに配布される。(sp. は「不明種」という意味。)
この ‘FO-076’ と同様の特徴を持つ個体が、のちに Agave oteroi と命名される。
【自生地】
メキシコの Sierra Mixteca(シエラミクスティカ)
【特 徴】
卵型 〜 楕円形の葉をしており、暗い緑色の場合が多い。葉の中央に薄い緑のしま模様が入ることが多い。
2000年代 ~titanotaとoteroi が混同されはじめる~
ランチョタンバーから採集された Agave の種子が出回る。ランチョタンバーは Agave titanota が採集された地なので、
「出回っている種子= Agave titanota では?」
さらに、育った個体が ‘FO-076’ に似ており、
「Agave‘FO-076’= Agave titanota では?」
という推測が広まる。
ここから約 20 年間、
Agave titanota と
Agave sp. ‘FO-076’(のちの Agave oteroi)
がどちらも Agave titanota と呼ばれることに。姿形が異なる2種類の個体を区別するために、いろんな呼び名前がつけられます。
本来の Agave titanota の特徴を持った個体には、
- ランチョタンバー系(採集された地名から)
- アズール(青白く細長い葉という意味)
など。
一方、「FO-076」の特徴を持った個体には、
- シエラミクスティカ系(採集された地名から)
- FO-076(コレクションナンバーから)
- ヴェルデ(緑色の葉という意味)
などのあだ名がつけられました。
2019年 ~Agave oteroi が新種記載~
「同じ Agave titanota なのに姿の違う2種類が存在するのはおかしい!」と思っていた方々が現地調査を重ねてくれていたようで。
2019 年 6 月、Agave「FO-076」は Agave oteroi として新種記載されました。
・・・
以上の流れでやっと Agave titanota と Agave oteroi が別の種として記載されたわけです。
Agave titanota ' No. 1 ' という名前の由来
ここまで様々な用語を解説するために過去をさかのぼってきたわけですが、
「実際、Agave titanota ' No. 1 ' って titanota?、それとも oteroi?」
「なぜ、' No. 1 ' って名前がついたの?」
「 ' No. 1 ' と ' 農大 No. 1 ' は一緒なの?」
「 同じ' No. 1 ' でも見た目が異なるのは何故?」
という疑問が残ります。
続いては、Agave titanota ' No. 1 ' という名前の由来について書いていこうと思います。
1984年 ~未知の Agave 東農大に来日~
未知の Agave が東京農業大学に来日する。
まだ、種の登録がされていないため、Agave sp. (sp. は「不明種」という意味。)とされるわけですが、
「一番かっこいい!」からか、
「一番最初に日本に来た株だから」なのか
'No.1' という個体名がつけられ、Agave sp. 'No.1' と呼ばれるようになる。
2000年代 ~Agave titanota ‘No.1’ と呼ばるように~
海外ではフェリペ・オテロ氏のAgave sp. ‘FO-076’ が Agave titanota と呼ばれていた時代。Agave sp. ‘FO-076’ をみた日本人が、
「Agave sp. 'No.1' って Agave sp. ‘FO-076’ に似てない?同一種では?」
となったのでしょう。
当時 Agave sp. ‘FO-076’ は Agave titanota と呼ばれていたため、Agave titanota 'No.1' になった と思われます。
流れをまとめると、
Agave sp. 'No.1' はオテロ氏由来の Agave に似てる
↓
オテロ氏由来の Agave は「Agave titanota」と呼ばれている
↓
Agave sp. 'No.1' は「Agave titanota」なのではないか?
↓
'No.1'の部分は残して「Agave titanota 'No.1'」と呼ぶことにしよう。
このような流れから、日本に来たナゾの Agave は「Agave titanota 'No.1'」と呼ばれるようになったようです。
「Agave titanota 'No.1' は 2019 年以前に 日本に輸入された Agave oteroi の総称」説
2019 年より以前は、Agave oteroi の特徴を持った個体に対する名前がなかったため、
2000 ~ 2019 年の間に日本で流通していた Agave oteroi は全て
「Agave titanota 'No.1'」とか
「Agave titanota 'ナンバーワン'」とか
「Agave titanota '農大No.1'」
と呼ばれていたのではないかと思います。
こう考えれば、同じ Agave titanota 'No.1' だとしても多少姿に差があるってことに納得できます。
まとめ
- Agave oteroi は2019年まで Agave titanota だと認識されていた。
- Agave titanota 'No.1' は 2019年以前に日本に流通した Agave oteroi である可能性が高い。
参考
【Web】
かなり深い情報まで記載してくれているのでとても勉強になります。皆様もぜひ!
【本】
【論文】
Agave oteroi(Asparagaceae/Agavoideae)a new species from North-central Oaxaca, Mexico
(GREG D STARR & TRISTAN J DAVIS ,2019)
- Agave titanota ' No. 1 ' (アガベ チタノタ ’ナンバーワン’)について ① 〜 チタノタ? オテロイ? ' No. 1 ' の正体を探る + 「FO-076」などの用語解説〜(本記事)
- Agave titanota ' No. 1 ' (アガベ チタノタ ’ナンバーワン’)について ② ~ストリートビューで探してみた & 現地の環境を考察〜
- Agave titanota ' No. 1 ' (アガベ チタノタ ’ナンバーワン’)について ③ 〜BBY 流の育て方 & 生育記録 Vol.1 〜