Dyckia 'T-Rex' の生育記録と、そこから見えてきた生育方針です。
- Dyckia 'T-Rex' について
- お迎え〜現在までの生育概要
- お迎え当時 ~ 3 月末までの生育記録
- 4 月 ~ 8 月 12 日までの生育記録
- 8 月 12 日 ~ 11 月末までの生育記録
- 振り返りと考察
- まとめ 〜今後の生育方針〜
- 詳細データ等
- 参考
Dyckia 'T-Rex' について
Vithit Thanduan 氏が Kheares から購入した Dyckia marnier - lapostollei の種子をまいて育てたものを選抜したもののようです。*1
植物体サイズが大きく、鋸歯も大きい個体らしい。手元での感覚も同様で、今までの Dyckia と比べてもかなり大きいなと感じました。
鋸歯サイズも大きく、まさにティラノサウルスのようです。この個体の特徴なのか'T-Rex' の鋸歯は少し曲がっています。もしかしたら環境で鋸歯が曲がることもあるのかな?
m-l 系では共通のことだと思うのですが、寒さに敏感なようです。寒いと徐々に葉先が枯れてしまうそうです。*2
お迎え〜現在までの生育概要
まずは、お迎え ~ 現在までの大まかな過程を記しておきます。
- 10月頃に購入。
- 3月まで全く動きがなかった。
- 3月末にダメ元で屋外管理(雨ざらし)に移行。
- 8/12 まで同様の管理を継続。
- 葉がとてつもなく真っ赤だったため、8/12 から室内の養生スペースに移行。
- 現在に至る。
こんな感じでした。それぞれ詳細に書いていこうと思います。
お迎え当時 ~ 3 月末までの生育記録
10 月頃にお迎えたのですが、3月まで全く動きがなかったです。
当時は m-l 系が寒さに弱いなんて全く知らなかったので、11月末まで屋外で管理していました。動きがなかった原因はこれでしょうか?
12 月から屋内に移動させますが、屋内も寒い!仕方なくヒーターを購入し、温度の確保に努めました。そうしたら今度は(おそらく)低湿度のせいで葉先の枯れが進行。3 月末に至ります。
4 月 ~ 8 月 12 日までの生育記録
流石にこのままでは良くないと思い、4 月から屋外管理に移行しました。
遮光一切無しの雨ざらし!漢気溢れる管理に。
この管理が功を奏したのか、葉が順調に展開しました。
ただ、葉が真っ赤に。雨ざらしのせいで、トリコームもかなり剥がれてしまいました。
まだまだ健康的ではありませんね。真っ赤だったので、今度は室内管理に移行。養生スペースにて葉の赤みを取ることに。
8 月 12 日 ~ 11 月末までの生育記録
室内管理に移行したおかげで、赤みが取れました。雨がかからないので、トリコームも完全に復活。
ウォーターマークもはっきりと見えるようになってきました。
では、順調に生育したのかというと、そんなことは無かったんですこれが。8 ~ 11 月末のようす一覧を見てください。
8 月末 ~ 9 月末にかけて、葉が大きくなっているのは確認できます。
9 月 ~ 11 月末はほとんど変化がありません。
だんだん綺麗になったきてるのになぁ。
振り返りと考察
3月末まで 全く動かなかった理由の考察
3 月末まで動かなかった理由を考えてみます。
- 寒かった
- 赤外線が少なかった(BBYは赤外線が根を誘導すると考えている)
- 室内管理時の湿度が低かった
純粋に寒かったのが、大きな要因かなと。でも12月からはパネルヒーターを用意していたし、、、。やっぱり動き出すには日光(紫外線 or 赤外線)が必要なんでしょうか。
4月~8月 葉の赤みとトリコームについて
次に、順調に生育した & 葉が赤くなってしまった、4 ~ 8 月を考察します。
- ある程度、根が張った。
- 気温が上がり、植物体の生命活動が盛んになった。
- 紫外線 or 赤外線 が活動のスイッチを入れた。
理由を考えてみると、余計に赤外線の存在が重要な気がしてきます。
- 日差しが強すぎた。
- 地上部のサイズと根のサイズが合っておらず、給水が追いつかなかった。
→ 鉢サイズが小さい?
今年の夏、紫外線(UV-B)量は多いときで、2.0 W/m2 程度とかなり強かったです。紫外線が強すぎて赤くなってしまったのかもしれませんが、、、。
でも、そもそも 4 月の時から真っ赤でしたね。とすると、地上部のサイズと根の量が合っていなかったため、給水が追いつかなかったのが原因かもしれません。
9月~11月 再び動かなくなった理由
9 ~ 11 月に成長しなかった理由はなんでしょうか。
まず考えられるのは、温度・湿度 等の環境です。
まず、湿度に関して。すべての月でおおよそ適正な飽差でした。
次に温度について。基本的には、4 ~ 8 月の方が気温が高かったです。
が、こちらを見てください。
これを見ても分かる通り、4 月と 10 月はほぼ同じ数値でした。ということは気温以外に別の原因があることになります。
となると何が原因になるのか、、、。考えられるのは光です。
両者の光源は、
4 ~ 8 月 → 太陽光
9 ~ 11 月 → LED
でした。そして、異なるのは
- 光量
太陽光:約 2000 μmol m-2s-1
LED :約 100 μmol m-2s-1 以下 - 光に含まれる波長
太陽光:紫外線・赤外線を含む様々な波長
LED:主に可視光。紫外線・赤外線はごくわずか。
光量に関して。
光量が多いと、純粋に成長量が増えそうです。
次に、光に含まれる波長に関して。
太陽光には、LEDの光にほぼ含まれていない紫外線・赤外線が含まれています。
紫外線はアントシアニンの蓄積を誘導し、
赤外線はオーキシンの生合成を誘導し、根の形成を促します。(R : FR 比〔赤色光:赤外線 比〕が低い〔赤外線の方が多い〕状態じゃないといけないようですが。)*3
さらに、光量と波長で共通して言えることは、
「植物の深部体温の上昇」です。
植物の体内はトカゲやヘビのように外気温に依存します。
暖かくなると生命活動は活発になり、逆に寒くなると、鈍くなります。
光量が増えればもちろん、植物体は温められますし、赤外線は深部体温を上げてくれるというのは人間も一緒ですよね。笑
まとめ 〜今後の生育方針〜
これまでの考察を受けて、生育していく上で気をつけようと思っていることをまとめます。
- 暖かくなってきたら植え替える。
- 紫外線を防ぐためにも、ある程度 (30% 程度) 遮光する。
- 雨ざらしにはしない。
- 今まで通り、湿度と寒さに気をつける。
- 深部体温を上げるためにも、できる限り日光に当てる。
来年はもっと綺麗に育てられるかなぁ、、、。
詳細データ等
参考
【論文】
Distinct Morphological, Physiological, and Biochemical Responses to Light Quality in Barley Leaves and Roots (K. Klem et al.,2019)