植物を育てていて、誰しもが考える理想の用土配合。一般的に「赤玉土は保水性が良い」や「日向土は排水性が良い」などと言われますが、具体的にはどの程度なのでしょうか?
理想の配合を見つけるためには、用土の特徴を細かく把握しておく必要があるかと思います。そこで今回は、よく使われる用土の保水性と排水性を調べてみました。
保水性と排水性を定義する 〜保水性と排水性って何?〜
そもそも保水性と排水性って何でしょうか?まずはこれらの用語を定義してみようと思います。
保水性
読んで字のごとく、水を留めておく性質のことだと思いますが、いざ、きちんと考えるとどんな性質でしょうか?パッと思いつくのは
「どれくらいの水量を保持できるか」
「水を何時間保てるか」
ですかね。今回は両方とも「保水性」とし、調べてみようと思います。
※厳密に言えば、「植物が吸収できる水をどれくらい保持できるか」だと思います。この点については、いずれ書きたいなと思ってます。
排水性
こちらは直感的にわかりやすいですね。今回は「吸水量を超えた水の排出しやすさ」と定義します。
実験に用いた用土
今回は赤玉土、鹿沼土、日向土の中、小、細粒と培養土を用いました。
【赤玉土】・・・中粒、小粒、細粒
【鹿沼土】・・・中粒、小粒、細粒
【日向土】・・・中粒、小粒、細粒
ひゅうが土株式会社さんから販売されているものをインターネットで購入。
【100 均の培養土】
各用土の保水性評価
評価手順
- 各用土を篩にて微粉を除去。(細粒のみ、ふるいに水切りネットをつけて微粉を除去。細粒は篩をすり抜けてしまうため。)
- 半日、天日干しして乾燥。
- 乾燥中に、各用土を入れるプレステラ90+水切りネットの質量を測定。・・・①
- 乾燥後、計量カップにて、すりきりで160ml をはかり、水切りネットを張ったプレステラに入れる。(水切りネットを取り付けたのは、細粒の各用土が鉢底からこぼれないようにするためです。また、条件を揃えるために、中、小粒にも取り付けてます。)
- プレステラ+水切りネット+用土の質量を測定。・・・②
- 上から十分に水を与えたのち、
- 再び、プレステラ+水切りネット+用土の質量を測定。・・・③
→ 結果1: どれくらいの水量を保持できたか - 質量測定後、1日ごとに各用土の質量を測定し、含水量の推移を記録。
→ 結果2 : 時間経過で含水量はどう変わるか
【静置場所の詳細】
・静置場所:室内
・温度:15 ~ 20℃
・湿度:50 ~ 60%
・日光の当たらない場所
結果1 : どれくらいの水量を保持できたか
各質量は、
用土質量 [g]= ② - ①
吸水量[g] = 吸水後質量(③ - ①) ー 用土質量
で算出しました。
用土の質量は、
という結果でした。また、粒径が小さくなるほど質量が増えるという結果となりました。粒が小さい方が、隙間が埋まり、より多くの用土が充填されたからだと思います。
吸水量のみを抜き出すとこんな感じでした。
吸水量は、
という結果になりました。
また、粒別の吸水量は
赤玉土、鹿沼土では、粒が細かくなるにつれ吸水量が増えています。多くの用土が入る分、より多く吸水できたからだと思います。
一方、日向土は、細粒になると吸水量が落ちていました。粒が細かくなると、用土体積あたりの穴体積が減り、表面積が小さくなって吸水量が減ったと考えられます。
また、培養土の吸水量が思っていたより低かったです。おそらく、乾燥させすぎたせいで、水を弾いてしまったからでしょう。
続いて含水比。
赤玉土は粒が小さくなるにつれ、含水比が増加しています。一方、鹿沼土と日向土は粒が小さくなると、含水比も低くなっています。
鹿沼土、日向土は「軽石」なので、粒が大きい方が、粒内に多くの穴があるはずです。穴が多い方が表面積が増え、多くの水を給水できるから、このような結果になったのでしょう。
結果2 : 時間経過で含水量はどう変わるか
吸水させた後、室内でどのように水分が減っていくか経過観察しました。
含水量は
含水量 = 吸水◯日後の質量 - 用土質量
で計算しました。
今回の環境では、どの用土でも、粒の大きさに関わらず 1日に約 3g 減少しました。言われてみればそうかもしれませんが、意外でした。
各用土の排水性評価
評価手順は『土壌物理性の簡易評価法および排水性の異なる培土の調製法の開発』を参考にしています。
評価手順
- 用土を 320 ml はかり、コップの中に入れた後、用土が十分に浸かるように水を入れ、約180分吸水。
- 底を切った2L ペットボトルを逆さにし、床から浮いた状態で固定しておく。
- ペットボトルに水切りネットを取り付け、その中に吸水させた用土を入れた後、何度かトントンし、用土とペットボトルとの隙間を埋める。
- 2分ほど待ち、用土から流れてくる余剰な水を除去。
- 下に計量カップとはかりをセットし、上から 100 g の水をゆっくり流し、
- 2分後、落ちてきた水量を測定。
結果
あまり差が見られませんでした。ただ、赤玉土(小粒)と培養土は他の用土に比べて、排水量が少なかったです。培養土が少なくなるのはなんとなくわかるのですが、赤玉-小粒はなぜ? 複数回試すことで、もう少しきちんとした結果が得られると思いますが、、、、。
確実に言えることは、
「排水量は粒の大きさに影響を受けない」
ということです。
まとめ
【粒別の吸水量】
細粒>小粒>中粒(赤玉土・鹿沼土の場合)
小粒>中粒 ≒ 細粒(日向土の場合)
【時間経過に伴う水分減少量】
今回使用した用土では、大きな差は見られなかった。
【排水性】
今回使用した用土では、大きな差は見られなかった。
複数回調べる方が正確なデータになると思いますが「とりあえずこんな傾向が見られますよー」というのはわかりそうです。理想の配合をめざして、これからも色々やってみたいなと思いました(^^)
参考
『土壌物理性の簡易評価法および排水性の異なる培土の調製法の開発』
niwanokoto.hatenablog.com「用土の性質を定量化する」という記事なのですが、かなりスマートにまとめられていて、非常に参考になりました。皆様もぜひ!