赤玉土を色々調べたので、ここにまとめようと思います。
私自身、出典元を気にしてしまうタチでして。今回は特に、出典元にこだわりました。さらに「〇〇力が高い」、「〇〇性は低い」などの表現は極力避け、できる限り数値で表しました。参考になれば幸いです。
※出典元には畑の土壌について書かれている書籍も含まれています。いわゆる鉢物に当てまらない部分があるかもしれませんが、ご了承ください。
赤玉土とは
関東ローム層から採取した赤土を篩にかけ、粒径別に乾燥させたものです。
起源は火山噴出物のうち粒度の粗な火山レキの風化物であり、栃木県鹿沼の火山灰土層下から硬い赤土を採出して風乾させ、人為的に篩別けしたものである。
出典:団粒性用土「赤玉」の水分保持機能について
ちなみに「関東ローム層」とは、赤城山など*1の火山から出た火山灰や軽石などからなる「赤土」層のことです。
関東平野にはーー中略ーー降下・堆積した火山灰や軽石などからなる「赤土」が広く分布しています。赤土の粒度が土壌学上のロームに相当することから、長い間詳細不明のまま「関東ローム」と呼ばれてきました。
出典:鹿沼土の話①-採掘から製品まで - GSJ 地質ニュース Vol. 8 No. 11(2019 年 11 月)
土壌学上のローム(Loam, 壌土)とは、国際土壌学会法による土性の区分で、
砂(粒径0.02~2mm) = 55 ~ 65 %
シルト(0.02~0.002mm) = 20 ~ 45 %
粘土(0.002mm以下) = 0 ~ 15 %
のものをいいます。*2
赤玉土の土性を測定したところ、実際は LiC (Light Clay 軽埴土) で、ロームより多くの粘土を含んでいるみたいです。*3
また、赤玉土の主成分は、結晶度の低いカオリン様の物質(メタハロイサイト)とのことです。*4
保水性・排水性
これらについては、別記事にて私自身で測定してみたのでよろしければどうぞ。
要点だけまとめると、以下の様な結果でした。
【排水性】
今回使用した用土では、大きな差は見られなかった。
pH
pH (H2O) = 5.7 ~ 6.4
でした。一般的に植物は pH = 5.5 ~ 6.4 を好むようなので*8、ちょうど範囲内ですね。
保肥力
ここでは、
保肥力=陽イオン交換容量(Cation Exchange Capacity : CEC)
と定義します。CEC とは、その土がどのくらい陽イオンを蓄えられるかを表したものです。赤玉土の CEC はどの程度なのでしょうか。
こればかりは自分では測定できないので、色々調べてみました。すると、日本土壌肥料学会が発行している雑誌の中に『鉢物培養土用各種資材の理化学的性質』という記事を発見。様々な場所で採取・購入された計 4 種の赤玉土について CEC を測定してくれています。少し古い記事ですが、貴重なデータです。
12.83 ~ 28.54[cmolc/kg] ※ cmolc/kg = meq/100g
でした。採取された場所や、粒度によって変化があるようですが、大まかにこれくらいと捉えることはできそうです。
理想の CEC = 20 ~ 30[cmolc/kg]*9なので、赤玉土だけでも理想の CEC 値を満たすことはできそう。かと思いきや市販品の赤玉土 中・小粒に限定すると、
12.83 ~ 17.54 [cmolc/kg]
と低くなってしまいます。やはり、有機物や粘土鉱物を入れるなどして CEC を高めたほうが良さそうです。
まとめ
- 赤玉土は関東ローム層から採取された赤土の塊を粒度別にふるい分けし、乾燥させたものである。
- 赤土は、風化した火山灰や軽石が堆積したものである。
- 他の用土に比べ、保水性が高く、排水性も同程度である。
- pH は 5.7 ~ 6.4 と多くの植物が好む酸度帯である。
- 保肥力 (CEC) は 12.83 ~ 17.54[cmolc/kg]程度であり、有機物や粘土鉱物を加える必要がある。
参考
【本】
【Web】
- 団粒性用土「赤玉」の水分保持機能について
高 錫九、矢橋 晨吾、雨宮 悠 - 造園雑誌55 (5): 145-150, 1992 - 鉢物培養土用各種資材の理化学的性質
小島道也, 佐藤幸夫, 丸山保司 - 日本土壌肥料学雑誌, 1982 - 赤玉土と赤色土(国頭マージ)を用いたラッカセイ,ダイズ,セスバニアの低リン耐性の比較ならびに菌根菌接種の影響
鬼頭誠 - 日本作物学会紀事 第 88 巻(2019) - 赤玉土を用いた数種マメ科植物の低リン耐性の比較とセスバニアの低リン耐性に及ぼす根系発達の影響
鬼頭 誠、松岡 寛之、近藤 葉子、内田 直次
- 日本土壌肥料学雑誌 第80巻 第5号 (2009) - 土壌・作物栄養診断のための分析法2012 - Ⅷ 付帯資料
CECで使われるミリグラム当量[me,meq]についてはこちらが参考になりました。
*1:北関東ローム層を形成する火山噴出物は、「赤城山」「男体山」「榛名山」「浅間山」由来で、主に赤城山が関わっていると推定されています。鹿沼土の話①-採掘から製品まで - GSJ 地質ニュース Vol. 8 No. 11(2019 年 11 月)
*2:新潟県における土づくりのすすめ方(平成17年2月作成) - Ⅰ 土壌の基礎知識
*3:団粒性用土「赤玉」の水分保持機能について p147
*6:赤玉土と赤色土(国頭マージ)を用いたラッカセイ,ダイズ,セスバニアの低リン耐性の比較ならびに菌根菌接種の影響
*7:赤玉土を用いた数種マメ科植物の低リン耐性の比較とセスバニアの低リン耐性に及ぼす根系発達の影響