BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

鹿沼土を深掘り〜成り立ちから性質まで & 酸性の理由〜

基本用土を深掘りシリーズ第 2 弾。今回は鹿沼土です。前回同様、各性質をできるだけ数値で表しています。では、どうぞ。

 

鹿沼土とは

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鹿沼土
左下:中粒  中央上:小粒  右下:細粒

鹿沼土関東ローム層の中にある、鹿沼軽石層から採取されている粒状の軽石です。鹿沼『土』と呼ばれますが、実は風化が進んだ『軽石』なんですね。

鹿沼軽石層は約 3 万年前に赤城山などから噴出した軽石の層で、栃木県鹿沼市でよく見られるそうです。*1(研究が進み、現在は42000 ~ 49000 年 前に形成されたと考えられていうようです。)*2

鹿沼土は長い間、地下水にさらされて変質しており、火山ガラスが変質した「アロフェン」という非晶質物質が主成分です。*3

 

保水性・排水性

この記事にまとめてあるので、詳しくはこちらをご覧ください。

bambooborny.hatenablog.com

ざっくりまとめると、こんな感じ。

【用土別の吸水量】
赤玉土鹿沼土 > 日向土 

【排水性】
今回使用した用土では、大きな差は見られなかった。

pH

よく言われるのが「鹿沼土は酸性土だ。」ということ。本当に鹿沼土の pH は低いのでしょうか?

実際の測定値

いつか自分で測定してみようと思ってたのですが、既にやっている方がいました。ありがたやー(ノ_ _)ノ

tomozoo.comこのサイトでの測定結果は、

鹿沼土の pH = 5.5 ~ 6.0 *4

とのことでした。あれ?酸性土と呼ぶには高くない?これでは赤玉土と大差ありません。

さらに調べると、日本土壌肥料学会が出版している雑誌の1982年のものに、園芸土の各数値を測定してくれている記事『鉢物培養土用各種資材の理化学的性質』がありました。正確な測定ができているはずなので、参考にさせてもらいました。そこでは

鹿沼土の pH = 5.9 *5

とやっぱり、酸性土と呼ぶには高すぎます。ではなぜ、酸性土と呼ばれるのでしょう。

鹿沼土が酸性土の理由

酸性土と呼ばれる理由について、色々と調べたのですが、明確な答えが見つからず。
どうしても気になったので、地質科学センターに聞いてみたところ、どうやら主成分である「アロフェン」が関わっているようです。

アロフェンは反応性が高く溶出しやすい活性アルミニウムを多く含み、地下水に溶出すると

Al3+ + H2O → Al(OH)2+ + H+

という反応で酸性を示します。鹿沼土ロームに比べて有機物に乏しいため、pH の緩衝能が低いことも酸性の一因になっている可能性があります。
出典:産総研・地質相談窓口様のご教授による

これを聞いて非常に納得!しばらく興奮してました。笑

このことから察するに、

【採取されてすぐ】
→ 活性アルミニウムがそこまで溶出していない。
→ 酸性を示さない。

【長期間、用土として使用すると】
→ 灌水により活性アルミニウムが溶出。
→ 酸性を示すようになる。 

こう考えれば、色々とつじつまが合います。また、

まだ、鹿沼土が酸性を示す原因には、わからないことも多く、きちんと論文が公開されていません。今後の研究の進展が待たれるところです。
出典:産総研・地質相談窓口様のご教授による

とも教えてくださいました。研究が進展してくれるといいですね。

pH のまとめ
  • 鹿沼土は酸性土と言われるが、採取直後の pH は 5.5 ~ 6.0 付近である。
  • 長期間、用土として使用すると他の用土よりも酸性を示すものと考えられる。

保肥力

ここでは、
保肥力=陽イオン交換容量(Cation Exchange Capacity : CEC)
と定義します。CEC とは、その土がどのくらい陽イオンを蓄えられるかを表したものです。

こちらも、『鉢物培養土用各種資材の理化学的性質』でみてみました。この記事では粒度別に CEC を測定してくれていますので、それぞれ載せてみます。

鹿沼土小粒の CEC = 12.91[cmolc/kg]
鹿沼土中粒の CEC = 15.07[cmolc/kg]
鹿沼土大粒の CEC = 51.09[cmolc/kg]

大粒に関しては「風化が進んでいるため、CEC が高くなっているのでは」と考察されてました。小・中粒の場合は CEC が低いので、有機物や粘土鉱物を加えるなどした方が良さそうです。

まとめ

  • 鹿沼土鹿沼軽石層から採取された軽石を粒度別にふるい分けし、乾燥させたものである。
  • 保水性は日向土より高く、赤玉土と同程度である。
  • 排水性は赤玉土や日向土と同程度である。
  • 鹿沼土は酸性土と言われるが、採取直後の pH は 5.5 ~ 6.0 付近である。
  • 長期間、用土として使用すると他の用土よりも酸性を示すものと考えられる。
  • 保肥力 (CEC) は 12.91 ~ 51.09[cmolc/kg]程度であり、大粒以外は有機物や粘土鉱物を加える必要がある。

 

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参考

【本】

  • 藤原 俊六郎『新版 図解 土壌の基礎知識』農文協(2013)
  • 上田 邦夫 『土壌・植物栄養学』三恵社 (2009)
  • 『図解でよくわかる 土壌診断のきほん』誠文堂新光社 (2020)

【Web】

tomozoo.com