我が家のアイドル、ベビベビ恵比寿大黒がピンチです。8月に入り、直射日光をガンガン浴びせていたら、こんなことに、、、。
葉が枯れ始めてしまったベビベビ恵比寿大黒。
この記事で、何故こうなったのか、回復させるにはどうすればいいのかを考察してみたいと思います。
背景
5月29日 グランカクタスさんからお持ち帰り。初めてのパキポディウムであり、小さかったので特にお気に入りの1株でした。
この時、すでに雨の日が多く、外に出せたのはほぼ週に1日。外に出す際は直射日光を当てていました。
7月も雨が多く、室内で生育させていました。ちなみに外に出した日を数えてみると、記録してあるだけで、
6月は 2、8、9、16、23、27日、の6日間。
7月は 10、16日の2日間。(すくな笑。もうちょい出してたかな?)
それ以外の日は室内で生育。AMATERAS LED でPPFD値が約 400μmol m-2 s-1程度の光を与え、サーキュレーターで弱い風を与えて生育させていました。
ちなみに、7月18日からUVライトを導入。この頃からなんとなく調子が悪そうでした。
8月に入ってから、急激に葉が枯れ始める。焦って遮光してある場所に避難させるも、枯れが止まらず。室内に避難させ、様子を見ることに。
原因は何?
何が原因なのでしょうか。考えられる要因としては
- UVランプから出る紫外線によってダメージを受けた。
- 強光のせいで、葉の温度が上昇し、ダメージを受けた。
- 湿度が高く、蒸散がうまくできないせいで葉の温度上昇が起こり、枯れた。
- 8月の急な気温上昇が植物にダメージを与えた。
- 細菌などに感染し、調子を崩した。
- 季節性のもので、具合が悪いわけではない。
室内で様子を見ていた時も、湿度は高かったので、3. は原因ではなさそうです。
室内は窓を開けっ放しにしているので、外気温とそんなに変わらず、暑い。にもかかわらず、ベビベビはそんなにダメージを受けていない様子。ということは4. の温度上昇も違う。
5. に関して、地上部は特に病気にかかっているような感じはしません。試しに根の様子を見てみることに。
8月5日に根の状況を確認。根は銀色で元気でした。
根も特に異常なさそう。5. も原因ではないようです。
1. 、2. はどちらも光に原因がありますが、なにぶん初心者なもので、これ以上の特定は出来ません。高温、強光などの条件が重なったせいで枯れてしまっているのかもしれません。
ですが、気温が高い(高過ぎる気もしますが、、、、)この時期に新しい葉をつけて、栄養をバシバシ蓄えてほしい!
光と水が沢山あれば新しい葉をつけてくれるのでは?
安直ですが、こう考えました。そして枯れの原因かもしれない 1. と 2. の不安要素も除外すべく、次のような環境を考えました。
- UVをほとんど含まないAMATERAS LED の光を照射させ、紫外線のダメージを抑える。
- サーキュレーターの風を直接当てて、葉面温度の上昇をできる限り抑える。
これで 1. と 2. の原因を避けつつ、光をガンガン当てられます。これはいけるのでは?
結果は、、、、
たったの2日で変化が現れました!
ジャン!!
また葉が枯れ始めた、、、。ごベーーーーん!!
このことから、恵比寿大黒ベビは(紫外線に関係なく)強い光に耐えられないことが考えられます。強光と高温のダブルパンチで葉枯れしてしまったのかもしれません。
参考著書によれば
「強い光と高温と低湿度が共にある環境条件は植物にダメージを与える。」出典:エペ・フゥーヴェリンク、タイス・キールケルス (2017) 『オランダ最新研究 環境制御のための植物生理』農山漁村文化協会
と書かれています。植物体が小さいと強光・高温の環境に置かれることは、かなりのダメージなのかもしれません。たとえそれがパキポディウムであったとしても、です。
それでもやっぱり葉をつけさせたい!なんとか栄養を蓄えさせたい。
私は論文を漁りまくりました。
バオバブの季節性に関する論文から新葉の形成条件を考察
「leaf initiation」などでキーワード検索しても、参考になりそうな論文がなかなか見つかりません。ホルモンバランスとか遺伝子発現関係の基礎論文ばかりヒットしてしまいます。少し見方を変えて、季節変化による形態形成について研究している論文を探しました。すると、
Leaf phenology of thirteen African origins of baobab (Adansonia digitata (L.)) as influenced by daylength and water availability
というバオバブの季節性に関する論文を見つけました。
パキポディウムの原産地も似たようなところなので、これは参考になるかも、と思い読んでみることにしました。
この論文では「バオバブは日長の長さと水分供給の変化によって季節を感じているのではないか。」という仮説の元、日長条件を変えたり、水分供給量を変えたりして、成長点の活性を調べていました。
この論文の結論は、、、、、
「十分な水の供給と日長条件で成長点の活動が活発になった。」
でした。日長の実験についてもう少し説明しますと、著者らは、日長条件を 11.5 時間、12 時間、12.5 時間の3つの条件でバオバブの苗を生育させ、成長点の活性を比較しました。35日後、12.5 時間で生育させた苗の活性は 11.5 時間の苗のおよそ2倍になっていたそうです。日長が30分延びるだけで、季節が変化したと感じる植物もいるらしく、これなら試す価値はあるなと思いました。
ただ、長日条件にすると具合を崩す植物もあるそうで、
トマトは連続光照射条件では、糖の輸送効率が下がり、デンプンが葉に蓄積してクロロフィルに損傷を与える。この現象は葉が黄色になったり、硬くなったりする症状からわかる。
出典:エペ・フゥーヴェリンク、タイス・キールケルス (2017) 『オランダ最新研究 環境制御のための植物生理』農山漁村文化協会
と書かれています。(アグラオネマの花が咲いてしまい、焦って長日条件にしたら、途端に具合が悪くなったのですが、これが原因かもしれません。余談ですがあまり光を要求しない植物は短日条件で育てたほうが調子が良さそうです。)
バオバブで問題ないならパキポディウムでも大丈夫だろうと考え、AMATERAS LED のタイマーを13時間にセット。今は水やりの頻度も上げています。これで新しい葉をつけてくれたらいいのですが、、、。
まとめ
高温・強光のダブルパンチは植物に結構なダメージを与える。
バオバブの成長点活性は、長日条件&十分な水の供給で上がる。原産地が近いパキポディウムでも同じことが言えるかもしれない。
参考
本
エペ・フゥーヴェリンク、タイス・キールケルス (2017) 『オランダ最新研究 環境制御のための植物生理』農山漁村文化協会
論文
Leaf phenology of thirteen African origins of baobab (Adansonia digitata (L.)) as influenced by daylength and water availability (L. Maddalena Di Lucchio et al.,2018)