先日、友人と植物談義をしていて話題に上がったのが、湿度。そこから議論は白熱し、気孔の開閉に発展したんです。そのとき感じたのが「俺、気孔の理解浅くね?」
せっかくの機会なので、気孔について色々調べてみると、気孔の開閉は、二酸化酸素の吸収はもちろん、様々な環境ストレスに関わっていることがわかりました。植物の育っている環境や状態を把握して、上手に育てられるよう、私が知っている情報をここにまとめることにしました。ついでに気孔開閉の観点から、過湿時の植物の生育を考察してみました。参考になれば幸いです。
- 気孔を開くと、CO2の吸収、根から無機養分の吸収、葉温を下げることがが可能
- 植物は様々な環境要因で気孔を開閉させる
- 乾燥に対しては土壌中の水分量だけでなく、空気中の水分量にも着目しよう
- 過湿状態が続くと植物は栄養を取り込めなくなってしまう
では、行ってみましょう。
ちなみにここでは気孔のメリット・デメリットや、気孔を開くとき・閉じるときについてまとめてあるのですが、書いてある以外に知っている情報がある方はぜひコメントなどで教えて欲しいです。m(_ _)m
まずこれを書かなきゃ始まりません。そう、気孔を開くメリットとデメリットです。
あと、気孔を開くと「蒸散」が行われます。蒸散は植物体内の水分を水蒸気として大気に排出する現象のことです。気孔を開くと自然に起こる現象なので、蒸散のメリット、デメリットも含めてあります。
気孔を開くメリットとデメリット
BBYが知っているものを挙げました。実際はもっとあるかもしれません。
- 二酸化炭素(CO2)を取り込める
- 蒸散により土壌中の無機栄養を取り込める
- 蒸散により葉を冷ますことができる
- 二酸化炭素(CO2)を取り込める
二酸化炭素は光合成をする上で欠かせないものですよね。いくら上質な光を浴びたって、材料となるCO2がなければ光合成できません。 - 蒸散により土壌中の無機栄養を取り込める
蒸散は植物が根から水を吸い上げる時の原動力です。水を吸い上げる時に、水に含まれる無機養分を吸収することができるのです。 - 蒸散により葉を冷ますことができる
さらに、蒸散には葉温を下げる効果があります。光が当たることによって葉温が上がり過ぎてしまった時、植物は気孔を開き、積極的に蒸散をすることによって葉温を下げようとします。
- 蒸散により水分を失う
これに尽きます。水を失うのはどの生物も共通ですな。
こう見てみると、メリット多いですね!水分を生贄にしてでも気孔を開く植物の気持ちがわかる気がします。
気孔を開くor 閉じるとき
では、どんな時に気孔は開くor 閉じるのでしょうか。開閉を完全にコントロールするっていうのはおこがましいですが、どんな時に開閉するかを理解しておくのは無駄ではない!はず。
気孔を開くとき
- 土壌中の水分&湿度が適切なとき
- サーカディアンリズムで「日中」だと感じているとき
- 葉内の二CO2濃度が低下したとき
- 青色光を浴びたとき
- 葉温が(強光などにより)上昇した時
- 土壌中の水分&湿度が適切なとき
コレは言わずもがな。水を失ってもへっちゃらって状態なら気孔を開いて諸々のメリットを得ようとします。 - サーカディアンリズムで「日中」だと感じているとき
サーカディアンリズムは「体内時計」のようなものです。人間はだいたい決まった時間に起きて、そして寝ます。植物も一緒で「起きている」時間は基本的に気孔を開けるようです。 - 葉内の二CO2濃度が低下したとき
CO2が低下した時も開くようですね。植物は「葉内の二酸化炭素濃度が減少する=光合成が盛んに行われている」と判断するようです。 - 青色光を浴びたとき
これはサーカディアンリズムとも関連するのですが、光を浴びた時、特に青色光を浴びると気孔を開くんだとか。気孔の開閉にはフォトトロピンという青色光の光受容体が関連しているようです。受光波長のピークは約450nm 付近だそう。植物が夜だと感じる直前に青色光を照射すると、サーカディアンリズムの「日中」の時間が延長されるなんて報告もありました。 - 葉温が(強光などにより)上昇した時
これは上記とは少し毛色が異なり、身を守る防御反応みたいな感じです。葉は自身の温度をきちんとモニターしているようで、熱くなると蒸散により葉温を下げようとするみたいです。
熱ストレスを受けると植物は、蒸散によって葉を冷却するため、気孔コンダクタンスを増大させる。
(気孔コンダクタンス=気孔抵抗の逆数。すんごくざっくり言えば、この数値が大きいほど、気孔を開いていることになる。)
出典:出典:L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館 p.738
気孔を閉じるとき
では、気孔を閉じるのはどんな時でしょうか。その多くは、植物が身の危険を感じたときのようです。
- 土壌中の水分&湿度が低いとき(アブシシン酸を介して)
- サーカディアンリズムで「夜」だと感じている時
- 土壌中の酸素が少なくなったとき
- 土壌中の水分&湿度が低いとき(アブシシン酸を介して)
これはイメージしやすいはず。アブシシン酸(ABA)は植物ホルモンの1種で、これが気孔に供給されると、気孔を閉じることが知られています。 - サーカディアンリズムで「夜」だと感じている時
「昼」と逆ですね。夜は日光もないし、二酸化炭素吸う必要ないので水分ロスを防ぐために気孔を閉じるようです。 - 土壌中の酸素が少なくなったとき
これに関してはどーゆう理屈かわかりません。テイツザイガーのストレスに対する植物の行動みたいなところにポツンと書いてありました。(><)
この中で気になるのが「土壌中の水分&湿度が低いとき」の「湿度」の部分。ホントカヨー。
土だけでなく大気の乾燥でも気孔を閉じる
土壌や大気の乾燥によって水ストレスを受けた植物では、気孔が閉じて蒸散が抑えられる。
出典:浅見忠男 / 柿本辰夫 新しい植物ホルモンの科学 第 3 版 (2016) p.56
湿度が上昇すると、ABAの分解が進み、ABAレベルが低下し、気孔の再開口を可能にする。
出典:L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館 p.745
これらの文献から、確かに植物は湿度に応じて気孔を開閉させるようです。
植物体内の湿度はほぼ100%、大気の湿度との差が大きいほど、蒸散は激しく起こります。大気の湿度が乾燥していると一気に体内の水分を持って行かれてしまうのでしょう。
適切な湿度って?
とても参考になったのはこのページ。
www.agri-note.jp飽差を含め、詳しく解説してくれています。
このページによれば、2hPa~10hPaの間であれば、植物は乾燥ストレスを受けないんだそう。それにしても、このサイトの飽差表がかなりイケてる。乾燥に敏感な植物は、特に湿度のコントロールも大事かも。
湿度が高すぎると
逆に、高湿度って植物にはどうなのでしょう?
高湿度となると、植物体内の湿度と大気の湿度の間にあまり差がない状態。気孔がガン開きで、二酸化炭素はガンガン吸い込めるけど、蒸散は起こらない。
理想の状態に思えますね。確かにこの状態だと植物は葉を茂らせるようです。
しかし、蒸散が行われないために、無機栄養を根から吸収できない。長期間、高湿度で育てると栄養不足になり葉が枯れてしまう。
弊害は他にもあります。高湿度状態が続くと、気孔がガバガバになってしまい、開閉がうまくできなくなってしまうそうです。
高湿度な環境っていうのはコタツに似てますね。
こたつって暖かくて気持ちいいですけど、気持ちよすぎて出られない。そのまま寝ちゃったなんて日にゃあ、風邪を引いちゃいます。高湿度な環境はまさに植物のコタツだ!
まとめ
- 植物は様々な環境条件で気孔を開閉させる
- 土壌の水分量だけでなく、湿度にも応じて気孔を開閉させる
- 高湿度な環境は植物にとってのコタツだ。長期間の高湿度管理は良くない
参考
【本】
浅見忠男 / 柿本辰夫 新しい植物ホルモンの科学 第 3 版 (2016)
L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館
【Web】