BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

日の長さが「枝分かれ」に与える影響とは

以前、枝分かれを減らすには栄養を与えずに育てると良い、的な記事を投稿しました。当時、枝分かれについて調べていると、テイツザイガーに「日の長さが枝分かれに影響与えるよー」みたいな内容が書かれていました。

しかし、詳細が書かれてない!長日条件だと枝分かれが増えるの?減るの?どっちなんだいっ?仕方がないので、色々と論文をあさって調べて見ました。

この記事で伝えたいこと
  • 長日条件だと、植物体の上部で枝分かれする
  • 短日条件だと、植物体の下部で枝分かれする
  • 植物種に応じて、適切な日照時間を考えた方がいいかも。

以下、詳細について述べます。

 

日の長さは枝分かれに影響を与えるようだ

今回、参照した論文は「Light Signaling in Bud Outgrowth and Branching in Plants(N. Leduc et al.,2014)」というもの。光と枝分かれの関係をまとめているreview 論文になります。英語が苦手な私でも読みやすく、要点を抑えてくれてあるのでとても参考になりました。
中でも参考になったのが、「2.3. Impact of the Photoperiod」。

この項にはこのような記述が。

  • 日が短いと、植物体の下部で枝分かれが起こる。
  • 日が長いと、植物の上部で枝分かれが起こる。

この現象は様々な植物種(エンドウ、rhododendron catawbiense というツツジ科の植物、シロイヌナズナ)で確認されているんだとか。

In the ornamental plant Rhododendron catawbiense, the shoot branching pattern was modified by  the photoperiod. the distal shoots of single shoot plants developed under long days (LD) (16 h day) while basal shoots remained quiescent. However, under short days (SD) (8 h day), the growth potential of distal buds strongly decreased.

(園芸植物であるRhododendron catawbienseツツジ科の植物]の枝分かれパターンは光周期に影響される。上部の枝分かれは長日条件[16時間]で増えたが、下部の枝分かれは不活発のままだった。一方、短日条件[8時間]では、上部の脇芽活性は強く減少した。)

出典:Light Signaling in Bud Outgrowth and Branching in Plants(N. Leduc et al.,2014)

in pea, short photoperiods (8 h day) increased the formation of basal branches.

(エンドウでは、短日条件[8時間]で下部の枝分かれが増加した。)

出典:Light Signaling in Bud Outgrowth and Branching in Plants(N. Leduc et al.,2014)

 私が枝分かれを抑えたいと思っているパキポディウムは、キョウチクトウ科の植物です。この報告がどこまで他の植物に通用するかわかりませんが、参考になりそうです。

ストリゴラクトンの枝分かれ制御とは別の経路

しかも、この反応経路は以前投稿した枝分かれ制御経路とは異なるようです。

以前の投稿はコチラ。

bambooborny.hatenablog.com

 

「Axillary Meristem Development. Budding Relationshipsbetween Networks Controlling Flowering, Branching, andPhotoperiod Responsiveness(C. A. Beveridge et al.,2003)」という論文に、その根拠となる実験が記載されていました。

この実験では、茎の頂点を切除した野生株と、たくさん枝分かれをしてしまうエンドウの変異体 (ストリゴラクトン合成変異株) を短日条件、長日条件下で育てました。その後、それぞれの植物の枝分かれをした節と、その長さを測定しています。結果がこちら。

 

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Fig. 3縦軸は節(ふし)、横軸は節から伸びた枝の長さ。
黒いグラフは短日条件下で育てた時、
白いグラフは長日条件で育てた時の枝の長さを表す。

出典:「Axillary Meristem Development. Budding Relationshipsbetween Networks Controlling Flowering, Branching, andPhotoperiod Responsiveness(C. A. Beveridge et al.,2003)」


「Decapitated WT」は、頂端を切除された野生型。
「Intact rms1-1, 2-2」は無傷のストリゴラクトン変異株。

ストリゴラクトンの変異株でも、日の長さで枝の出る位置に変化が見られます。
このことから、ストリゴラクトンとは別の経路が関与しているという可能性があります。

筆者らも

As in WT plants, the pattern of bud out-growth in mutants rms1 to rms5 remains strongly influenced by photoperiod, with a decrease in basal branching and an increase in aerial branching under long days (LD) compared with short days.

(野生株と同様に、rms1は日照時間の影響を強く受けた。短日条件と比較し、長日条件で基部の枝分かれが減少し、上部の枝分かれが増えた。)

 と述べています。そして、日長操作による開花時期の変更が枝分かれする位置に関与しているのではないかと考察していました。

この研究結果を応用するには

さて、今回の研究結果を受けて、今一度、私のグラキリスを見てみると、

 

枝分かれは下部で生じています。

以上の論文を参考にすると、この枝分かれは短日条件のせいで生じた可能性がありますねー。

確かに、私の植物生育スペース(ベランダ)は、夏の場合、7時から14時の約7時間です。これでも多い方かもしれないので、贅沢は言っていられませんが。
私のように、夏場、植物を屋外管理しているなら、日没後にLEDライトなどで補光するのがよいかもしれません。

冬の場合、私は植物を簡易温室内で管理しています。光源はLEDライト。自由に日照時間をコントロールできます。
本来なら、日照時間を16時間にして、バキバキの長日条件で育てたいところなのですが、、、、。現在管理している植物ラックには、様々な種類の植物がいます。例えば、ディッキア、オトンナ、ビルベルギア、アガベなどなど。

極端な長日条件にしてしまうと、他の植物の生育に悪影響を与えかねません。植物種によっては葉で合成されたデンプンが他の部位に分配しれきず、ダメージを受けることがあるそうです。理想は植物種ごとに温室を作ることなのですが、お金とスペースが足りません。(T ^ T) 現在 (2021/1/26)、LEDライトの点灯時間を12時間にして管理していますが、どうなんでしょ。

まとめ

日照時間を変えると枝分かれの仕方が以下のように変わる。

  • 日照時間が短いと、植物体の下部で枝分かれが起こる。
  • 日照時間が長いと、植物の上部で枝分かれが起こる。


さらに、下部の枝分かれを減らしたいなら

  • 屋外管理の時は、LEDライトで補光するのがいいかも。
  • 室内管理の場合、他の植物への影響を考えて日照時間を調節する。

参考

【論文】

Light Signaling in Bud Outgrowth and Branching in Plants(N. Leduc et al.,2014)

Axillary Meristem Development. Budding Relationshipsbetween Networks Controlling Flowering, Branching, andPhotoperiod Responsiveness(C. A. Beveridge et al.,2003)