BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

枝分かれを減らすには~腹に括った”1本の枝”にゃ敵わねぇこともある…~

我が家の実生グラキリスはこんな感じで、

不必要な枝が4本ほど、鉢から顔を覗かせています。
うーん、不格好ですなあ。笑 これはこれでいいのかもしれませんが、できるなら枝分かれをせずに丸—く育って欲しいもんです。てなわけで今回は、不必要な枝分かれを誘発させないような育て方の考察をしたいと思います。

 

 

オーキシンによる頂芽優勢を利用する?

枝分かれを防ぐといったら、まずこれを思い浮かべるんじゃないでしょうか。
頂芽優勢とは、脇芽の成長よりも植物頂点の成長を優先させる、という植物の性質で、オーキシンという植物ホルモンによって引き起こされます。
しかし、頂芽優勢は避陰応答に関与している印象があります。。。。
テイツザイガーにはこんな記述が。

被陰条件での腋芽の成長抑制に関して、オーキシンとストリゴラクトンの双方のシグナル伝達と、腋芽特異的なBRC1およびBRC2遺伝子を使っていることが示唆されている。
出典:L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館

頑張ってイラストにしてみました。笑

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頂芽優勢のメカニズム

避陰応答は植物をヒョロヒョロにしてしまうため、できる限りさせたくない。
ここで登場するのが、ストリゴラクトンです。でも、ストリゴラクトンって?

ストリゴラクトンの効果を利用する

ストリゴラクトンとは植物ホルモンの一種で、比較的最近発見されたものです。
主な効果は、

  • 枝分かれを抑制する。
  • リン酸欠乏応答を司っている、かもしれない。
  • アーバスキュラー菌根菌との共生を促進する。

です。
アーバスキュラー菌根菌は植物と共生する菌のこと。植物からエネルギー源をもらい、代わりにリン酸を植物に提供します。)

オーキシンと共に避陰応答にも関与しているようですが、大きな違いが1つあります。
それは、
ストリゴラクトンは栄養飢餓状態で内生量が増加する。」ということです。
どうやら植物は、今ある幹や枝に栄養源を集約させることで貧栄養条件に適応しようとするようです。

特に、リン酸欠乏条件下で内生量が増加するようです。
ほほう。これなら簡単にできそうですね。要はリン酸を含む肥料をあげなければいいだけ。

 

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ストリゴラクトンの作用

土壌の窒素源が枝分かれに影響を与える

土壌の窒素源が枝分かれに影響を与えることもわかっているそうです。*1
この参考論文にはさらに以下の内容が書かれています。

  • 多くの草本や木を使った実験では、窒素源が多く含まれた土壌で育てた場合、枝分かれの数が増え、それぞれの枝の成長が盛んになった。
  • 硝酸アンモニウムが多く含まれている土壌でコメを育てると、オーキシンの合成が抑制され、頂芽優勢の低下が起こった。

これらの現象には、サイトカイニンという植物ホルモンと、オーキシンやストリゴラクトンの下流遺伝子であるBRANCHED1 (BRC1)が関与しているんだとか。
BRC1は枝分かれを制御する重要な遺伝子で、この遺伝子が働く(発現する)と、枝分かれが抑えられます。
ストリゴラクトンやオーキシンはBRC1の発現を促し、サイトカイニンは抑制します。
サイトカイニンは土壌中の窒素源が多いと合成されます。

つまり、土壌中の窒素源を減らしてやれば、サイトカイニンが分泌されない = 枝分かれしない ということです!

ホウ素が欠乏すると枝分かれしやすくなってしまう

ホウ素は微量要素の1つで、植物の代謝における機能の多くは不明ですが、細胞伸長などに関与することが示唆されているそうです。私の愛読書、テイツザイガーには

頂芽優性が失われる結果、高度に枝分かれする場合があり、枝の先端は細胞分化が阻害されていることから、まもなく壊死にいたる。
出典:L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館 p.128

とあります。微量元素なので、そんなに気にする必要は無いと思いますが、こーゆうこともあるんだ程度に覚えておくのはいいかもしれません。

また、ホウ素が含まれる肥料を探したところ、こんなものがありました。

こちらは液体肥料で薄めて使います。ラクで良いですね。

 

アミノール化学研究所 微量要素8 植物のビタミン剤 400g

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  • 発売日: 2014/06/06
  • メディア: Tools & Hardware
 

こちらは固形で、水に溶かして使うようです。ミネチットには含まれていない、マグネシウムが入っています。


個人的に両方試してみようと思います。良かった方は何かしらの形で報告しようと思います。ホウ素は微量要素なので分量を間違えると過剰症状が出るかもしれませんので、お気をつけください。

 

まとめ

枝分かれを防ぐには

  • リン、窒素を含む肥料を与えない
  • 欠乏しない程度にホウ素を与える

よくよく考えてみると、パキポディウムが生息している地域に窒素源なんてほとんどないでしょう。本来の姿を引き出すのに、肥料は要らないってことなんですかね。

参考

【本】

L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館

【Web】

ストリゴラクトン研究の進展と環境応答における役割

【論文】

BRANCHED1: A Key Hub of Shoot Branching (M. Wang et al.,2018)

*1:BRANCHED1: A Key Hub of Shoot Branching (M. Wang et al.,2018)