植物の育て方について調べていると、よく目にする言葉があります。
「西日に当てるのは良くない。」
これですよ。
今回は、「西日や夕日がなぜ良くないのか?」、「西日が光形態形成に及ぼす影響」について考察していこうと思います。
ちなみに、西日と夕日の違いは、
夕日・・・夕方の太陽そのものを指す。
西日・・・夕方の太陽から発される光。
だそうですよ。
西日(夕日)が照る時間帯は過酷な環境である
「西日は良くない」とは言いますが、
実際は「西日の差す、午後の環境が良くない」のです。
どういうことか解説していきます。
日差しは日の出から次第に強くなり、12 時に最大になります。
日が昇るにつれ、太陽と地上の距離が短くなり、より多くの光が地上に届くようになるからですね。
一方、気温は日差しから2時間ほど遅れて、14 ~ 15 時に最高になります。
同様に、湿度も 14 ~ 15 時に最小になります。
その結果、14 ~15 時は飽差がとても大きくなってしまいます。
飽和差が大きいと植物は気孔を閉じます。
その結果、蒸散できないせいで葉温が上昇し、植物は高温ストレスを受けます。
(飽差・蒸散などについてはこの記事で詳しく紹介しています。よろしければどうぞ。)
さらに、午後は土壌中の水分が減少します。午前中の日差しにより、土壌中の水分が蒸発してしまうからですね。乾燥ストレスも受けます。
さらにさらに、14 ~15 時は決して日射量低いわけではありません。高温・乾燥ストレスを受けている体には十分な強光です。強光ストレスも受けます。
おそらくこれらのストレスが「西日は良くない」という最大の理由だと思います。
次の項では、昼の日差しと西日で光成分にどんな違いがあるか、その違いが植物に影響を与えるか、を書いていこうと思います。
昼と夕で日光の光成分は異なるが、植物への影響は小さい
順を追って説明していきます。少し回りくどいかもしれませんが、お付き合いください。m(_ _)m
太陽には様々な波長の光が含まれている
光は「波」の性質を持っています。
波の長さ(波長)に応じて色が変わります。例えば、
波長が短い(約400nm) → 紫、青 (さらに短くなると、紫外線)
波長が長い(約700nm) → 赤 (さらに長くなると、赤外線)
太陽光には様々な波長の光が含まれています。
続いて、昼と夕で光成分が異なる理由を説明します。
これには「散乱」という光の性質が関係しています。
昼と夕で光成分が異なるのは「散乱」という現象のせい
「散乱」とは、光が空気中の分子など、微小な粒子にぶつかると四方八方に飛び散る現象のことです。(乱反射とは違うよ。)そして波長が短い光ほど「散乱」されやすい(散乱する確率が高い)のです。
昼間は太陽が真上にあるので、波長の短い光(青色光など)が散乱されます。波長の長い光(赤色光など)はほとんど散乱することなく地上部へ直に到達します。
一方、夕方は太陽が斜めヨコにある分、地上からの距離が長くなります。そのため、青色光は遠い空で散乱されつくし、さらに赤色光も近くの空で散乱されてします。しかし、赤外線は赤色光よりも波長が長いため、地上部に到達してしまうのです。
表にまとめると以下のようになります。
光成分は変わっても植物に大きな影響はない
ここまで昼と夕で光成分が異なる理由を書いてきましたが、気にすることはありません。理由としては
- そこまで大きな差ではない。
- 差が出るのは 16 ~ 18 時台の限られた時間帯だけである。
ということです。西日しか当たらない場所で育てている場合は、光形態形成の観点から影響が出るかもしれませんが、大抵は問題ないと思います。
まとめ
- 西日が良くないと言われる理由は、西日の差す午後の環境は植物に「高温・乾燥・強光」の複合ストレスを与えるから
- 昼と夕方で光成分は異なるが、植物への影響は小さい
参考
【本】
L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館
Newton 別冊 改訂版 みるみるよくわかる 光とは何か? Newton Press (2010)