BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

西日や夕日が植物に良くない理由を考察

植物の育て方について調べていると、よく目にする言葉があります。

「西日に当てるのは良くない。」 

これですよ。
今回は、「西日や夕日がなぜ良くないのか?」、「西日が
光形態形成に及ぼす影響」について考察していこうと思います。

ちなみに、西日と夕日の違いは、
夕日・・・夕方の太陽そのものを指す。
西日・・・夕方の太陽から発される光。
だそうですよ。

西日(夕日)が照る時間帯は過酷な環境である

「西日は良くない」とは言いますが、
実際は「西日の差す、午後の環境が良くない」のです。

どういうことか解説していきます。

日差しは日の出から次第に強くなり、12 時に最大になります。

日が昇るにつれ、太陽と地上の距離が短くなり、より多くの光が地上に届くようになるからですね。

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2021/7/22 つくばの紫外線の強さ。
全天日射量も同様のグラフになると思われる。

出典:有害紫外線ネットワーク > 速報値

一方、気温は日差しから2時間ほど遅れて、14 ~ 15 時に最高になります。

同様に、湿度も 14 ~ 15 時に最小になります。

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千葉 2021/7/22 の気温と湿度のグラフ。1:00 ~ 17:00 までを表示。
出典:気象庁 アメダス

その結果、14 ~15 時は飽差がとても大きくなってしまいます。

飽和差が大きいと植物は気孔を閉じます。

その結果、蒸散できないせいで葉温が上昇し、植物は高温ストレスを受けます。

 (飽差・蒸散などについてはこの記事で詳しく紹介しています。よろしければどうぞ。)

bambooborny.hatenablog.com

 

さらに、午後は土壌中の水分が減少します。午前中の日差しにより、土壌中の水分が蒸発してしまうからですね。乾燥ストレスも受けます。

 

さらにさらに、14 ~15 時は決して日射量低いわけではありません。高温・乾燥ストレスを受けている体には十分な強光です。強光ストレスも受けます。

 

おそらくこれらのストレスが「西日は良くない」という最大の理由だと思います。

 

ここまでのまとめ=西日が良くない理由

 

西日の差す、午後の環境は植物に「高温・乾燥・強光」の複合ストレスを与えるため

 

 

次の項では、昼の日差しと西日で光成分にどんな違いがあるか、その違いが植物に影響を与えるか、を書いていこうと思います。

昼と夕で日光の光成分は異なるが、植物への影響は小さい

順を追って説明していきます。少し回りくどいかもしれませんが、お付き合いください。m(_ _)m

太陽には様々な波長の光が含まれている

光は「波」の性質を持っています。
波の長さ(波長)に応じて色が変わります。例えば、
波長が短い(約400nm) → 紫、青 (さらに短くなると、紫外線)
波長が長い(約700nm) → 赤 (さらに長くなると、赤外線)

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出典:Newton 別冊 改訂版 みるみるよくわかる 光とは何か? Newton Press (2010)

太陽光には様々な波長の光が含まれています。

続いて、昼と夕で光成分が異なる理由を説明します。

これには「散乱」という光の性質が関係しています。

昼と夕で光成分が異なるのは「散乱」という現象のせい

「散乱」とは、光が空気中の分子など、微小な粒子にぶつかると四方八方に飛び散る現象のことです。(乱反射とは違うよ。)そして波長が短い光ほど「散乱」されやすい(散乱する確率が高い)のです。

 

昼間は太陽が真上にあるので、波長の短い光(青色光など)が散乱されます。波長の長い光(赤色光など)はほとんど散乱することなく地上部へ直に到達します。

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参考:Newton 別冊 改訂版 みるみるよくわかる 光とは何か? Newton Press (2010)

 

一方、夕方は太陽が斜めヨコにある分、地上からの距離が長くなります。そのため、青色光は遠い空で散乱されつくし、さらに赤色光も近くの空で散乱されてします。しかし、赤外線は赤色光よりも波長が長いため、地上部に到達してしまうのです。

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参考:Newton 別冊 改訂版 みるみるよくわかる 光とは何か? Newton Press (2010)

 表にまとめると以下のようになります。

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昼と夕方の光成分のちがい。実際に測定しているわけではないので、
抽象的な表現しかできませんでした。申し訳ないですぅ。

 

光成分は変わっても植物に大きな影響はない

ここまで昼と夕で光成分が異なる理由を書いてきましたが、気にすることはありません。理由としては

  • そこまで大きな差ではない。
  • 差が出るのは 16 ~ 18 時台の限られた時間帯だけである。

ということです。西日しか当たらない場所で育てている場合は、光形態形成の観点から影響が出るかもしれませんが、大抵は問題ないと思います。

 

まとめ

  • 西日が良くないと言われる理由は、西日の差す午後の環境は植物に「高温・乾燥・強光」の複合ストレスを与えるから
  •  昼と夕方で光成分は異なるが、植物への影響は小さい

参考

【本】

L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館

Newton 別冊 改訂版 みるみるよくわかる 光とは何か? Newton Press (2010)