BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

植物が感じる「明るさ」の単位 〜 PPFD とは?~

植物の光合成を考える上で外せない光の単位、PPFD について簡単にまとめました。

 

 

2020.10.23 追記
PPFD値が高く、波長も良さげなライトを pick up したので、よければこちらもどうぞ。↓↓

bambooborny.hatenablog.com

 

 光の性質〜波と粒〜

 

光には2種類の性質があります。1つは波としての性質、もう1つは粒としての性質です。


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光合成を考えるときには、光を粒として扱ったほうが合理的なんです。

「なんで粒として扱った方が合理的なの?」っていうのは後述します。

 

光合成を考えるならPPFDを使え

 光合成を考えるときに使う光の単位に光合成光量子束密度 (Photosynthetic Photon Flex Density : PPFD)[mol/ m2・s]というものがあります。

 この単位は、植物が光合成に利用する波長の光を、一定時間内、一定面積内に受ける光の粒(光子)の量として表しています。
例えば、

 太陽の直射日光のPPFDは約 2000 μmol/m2・s

 曇りの日のPPFDは約 50 〜 100 μmol/m2・s  です。

これだけでも覚えておくと、日なたや日陰のおおまかなPPFD値が推測できると思います。

ただ、植物生育のライトやLEDのような人工光源の場合は、植物との距離によってPPFD値が変動するので注意が必要です。

 

PPFDを使う理由

 光を波として考えると波の数(波長)によってその光の色が変わります。

そして波長ごとに持っているエネルギーの量が違います。光の粒(光子)として考えた時も同様で、持っているエネルギー量が異なります。

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 光合成で大事なのは「光の持っているエネルギー量」ではなく、「光の粒が当たった数」です。植物は光の粒(光子)のエネルギーのうち、一定量しか吸収しません。余ったエネルギーは熱などに変換され、放出されます。「高エネルギーの青い光子」 と 「低エネルギーの赤い光子」 が同じ数葉っぱに当たったとしても光合成の量は同じです。

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 そのため、光を「波長として」ではなく、「粒」として考えたほうが、光合成を考えるときには合理的です。

  

他の光の単位〜放射量と測光量〜

 先ほども紹介したように、晴れの日の PPFD 値は約 2000 μmol/m2・s です。

 晴れの日なら屋外に出しておけば問題ありませんが、梅雨の時期など、室内で植物を育てるときもあります。太陽以外の光源のPPFDはどのくらいなのでしょうか。蛍光灯のPPFDは?LEDは?気になりますよね。

  残念ながら、一般に使われる照明器具には、PPFD値はほとんど記載されていません。ですが、安心してください。照明器具に書かれている光の値から大体の PPFD 値を導くことができるのです。

 そのために、まずはPPFD以外の光の単位について簡単に理解しておく必要があります。以下に簡単にまとめていきたいと思います。 

 

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ざっくりいうと、

放射量は各波長の持つエネルギー量を表す単位で、

測光量は人の目から見た明るさを表す単位です。

PPFDは放射量と測光量のどちらからも導くことができます。

 

測光量はあてにならないよ

 上述したように、放射量はそれぞれの波長が持つエネルギー量に着目した単位で、比較的簡単に光子量に変換することができます。別に使う必要はありませんが、計算式を載せておきます。

 光子 1 個 あたりのエネルギー量 E [J] は

 

E=hc / λ

 

h : プランク定数 (6.63×10-34 Js)

c : 光速 (3×108 ms-1)

λ : 波長(1 nm = 10-9 m)

例 青色の光子 1 個が持つエネルギー

 

6.63×10-34 Js × 3×108 ms-1  / 400 ×10-9m = 4.97×10-19 J

この値を使えば、光子量が計算できます。では、測光量の単位からはどうなのでしょう?

 照度(ルクス)や光束(ルーメン)は人の目で見たときの明るさに着目した単位です。人にとっては黄緑色(波長で表すと555 nm)の光が一番明るく見えるそうです。測光量は、黄緑光の明るさを1とし、他の光の明るさを相対的に数値化しています。

 例えば、青色(400 nm)の光の明るさは約0.1になります。では、明るさを揃えたときの各色の光子量はどうなるのでしょうか。以下の手順で計算し、表にまとめてみました。

  1. 先ほどの計算式から各色の光子 1 個 あたりのエネルギーを算出。
  2. 各色の光子 1 個 あたりのエネルギーから、10×10-19[J]のときの光子の数を算出。
  3. 明るさを 1 に揃えた時の光子量を算出。

 

 

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人が「同じ明るさ」と思っても、その中にある粒子の数にはとても差があります。

仮に明るさ1の時、青の光には 20 個の粒子が含まれていますが、 緑の光には 2.8 個の粒子しか含まれていません。

 このように、「測光量の値が大きいからめっちゃ光合成してくれそう!」と思うのは危険です。

放射量と測光量からPPFDを導く

 放射量と測光量をそのまま使うことの危険性を解説したところで、具体的なPPFDの求め方を説明します。といってもほっっっんとに大体の値しか出せないので、参考程度に使ってください。

 計算手順は以下のようになっています。

(光度、照度が分かっている場合は途中から計算できます。)

  1. 光束(ルーメン)から光度(カンデラ)を算出する。
  2. 光度(カンデラ)、光源の距離と照射角を使って照度(ルクス)を算出する。
  3. 照度(ルクス)に換算係数をかけてPPFDを算出する。

例として、私の愛用している植物生育用LEDも載せておきます。参考程度に見てください。

 

1. 光束(ル—メン)と照射角から光度(カンデラ)を算出する。

 大体の照明器具の場合、ルーメンは説明書にほぼ載っています。照射角は説明書に載っていない場合、光源から光の出ている角度を見て大体の値を入れればオーケーです。
ここから光度(カンデラ) C を計算していきます。

計算式は 

C = I / 2π(1-cosθ)

C:光度 [cd]

I:光束 [lm]

π:円周率 = 3.14

θ:照射角を2で割った角度

例)植物生育用LED

    光束 2098 lm

    照射角 60° くらい? θにはその半分の30°を入れ、計算する。

 

植物生育用LEDの光度 =2098 lm /{2×3.14×(1-0.86)} =2385.9 cd

 

2.  光度(カンデラ)から照度(ルクス)を算出

今回は点光源から植物に向かって垂直に光が当たっている状況を想定して進めていきます。

光度(カンデラ)から照度(ルクス)を計算するときには、光源から植物までの距離が必要になります。

計算式は

 

L = C / h2

L:照度 [lx]

C:光度 [cd]

h:植物と光源の距離 [m]

 

例:植物から 40 cm (=0.4 m)上に植物生育用 LED を設置した時の照度

 

L=2385.9 cd / (0.4)2 m=14912 lx

これで照度が出ました。この値は掲載されている数値 18050 と結構差がある、、、、。まあ大雑把な計算なのでしょうがないでしょう。スマホのアプリでも照度計測してくれるものがあるので、使ってみてもいいかもしれません。私にはどうも合いませんでした。

 

3. 照度(ルクス)を換算係数で割ってPPFDを算出する。

 「光合成の森 光の単位」というページに、光源の種類ごとに換算係数が掲載されているので、それを目安にするとよいと思います。ただし、LEDの場合は換算係数が書かれていません。典型的なLEDの波長分布を見る限り、換算係数はおそらく55~65の範囲だとおもいますが、なんとなくなので、計算する際は自己責任でお願いします。

 

例 植物生育用LEDの場合

  私の使っている植物生育用LEDは換算係数が算出されていました。換算係数は 46 なので、先ほど算出した数値を 46 で割ると、

 

14912 lx ÷ 46 = 324.1 μmol/m2・s

  植物生育用LEDの説明書に記載されている数値は 406 μmol/m2・sです。と約 80 の差が出てしまいました。おそらく、計算式がガバガバなのと、推定値を使っている部分もあったため、今回のような結果になってしまったのだと思います。これだけガバガバでもいいよという人は参考にしてみてください。 照度や照射角が説明書にと記載されていれば、もう少し正確なPPFD値が出せると思います。

もっと詳しい方、いらっしゃいましたら教えてください。

 

 

まとめ

  • 光合成を考えるとき、光の単位にはPPFDを使おう。
  • 光度、光束など測光量の単位はあてにならない。
  • PPFDは光度、照射角が分かれば、大体の値は導き出せる。

でした。でもこの記事には大事なことが抜けています。

「植物には、どれくらいのPPFD値が一番いいの?」

これについては次の記事にしたいと思います。 

 

参考

  • テイツザイガー 植物生理学

web