BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

急に直射日光に当てるのはまずいのか?〜光馴化って本当にあるの?〜

 今年の梅雨はヤバイですねー。ずーっと雨。九州の方々、辛いと思いますが、頑張ってください。それしか言えないのがもどかしいです、、、。私は千葉県住みなのですが、去年の台風で10日間停電が続き、割と大変でした。(冷水シャワーで風邪をひき、39度の熱を出し散々でした。そしてなぜか人生初の痔になりました。)
 さて、連日の雨のせいで我が家の植物たちは徒長しまくりです。泣 昨日は久しぶりの晴れということで、植物を外に出しましたが、実は結構ビビってました。というのも、「いきなり、植物を外に出して大丈夫なのだろうか?」という悩みがあったからです。そこで、光に慣れさせる必要があるのかを、葉焼けのメカニズムからまとめてみました。

 

 

葉焼けのメカニズムを知ろう 〜学術的にいうと光阻害〜

 真夏に直射日光を当てると、葉っぱの一部が灰色になっていることがあります。これは俗にいう「葉焼け」という現象です。(私もやったことあります。植物さんたちごめんなさい。)
 これはかっこよくいうと、「光阻害」という現象です。光があまりにも強いと、葉緑体が受け止めきれません。受け止めきれなかったエネルギーが植物体を攻撃するのです。(具体的にいうと、余剰エネルギーは活性酸素種となって、葉緑体を攻撃します。)
 この葉焼け、大まかに2種類あるようです。

  • 適温時の光阻害
    私たちが思い浮かべる、まさに「葉焼け」です。植物種によって葉緑体が受け止めきれる光エネルギーの量は異なります。私も育てているアガベや、パキポディウムは直射日光をガンガン当てても元気ですが、ビルベルギアは受け止めきれないようです。

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    葉の上部が「葉焼け」してしまった Billbergia 'Incendiary Delight'


  • 低温時の光阻害
    キュウリの実験で明らかになった光阻害だそうで、10℃以下の低温で起こります。なんと、100 μmol m-2 s-1程度の弱光で引き起こされてしまうようです。100 μmol m-2 s-1 って、だいたい雲が多い日の日光の光量です。これは怖いですねー。特に低温に弱い植物は気をつけたほうが良さそうです。

植物の対応 〜植物もマジェント・マジェントになれるか〜

(ちなみにマジェント・マジェントはジョジョの7部に出てくる敵キャラで、無敵のやつです。能力自体はめちゃ強いと思ってるんですけど、どうでしょう?)

強い光から自分の身を守るため、植物も対抗策を打ち出します。以下に主な対抗策を挙げます。

  1. 蒸散によって気化熱を奪う
    直射日光を浴び続けていると、葉の温度はとても高くなってしまいます。葉の温度を下げるために、蒸散をします。人間も「打ち水」で庭に水をまいて温度を下げていますが、それと同じです。蒸散によって水を体の外に出すことで、周囲の温度を下げようとしているんですね。
  2. Rubiscoの増産
    Rubiscoっていうのは、二酸化炭素を同化するときの酵素です。これをたくさん作ってなるべく光エネルギーが余らないようにしているんですね。なお、Rubisco合成には窒素が必要です。
  3. トリコームの生成
    葉の表面にできることがある、白、銀色っぽいうろこのようなものです。白や銀色は光を反射するので、葉緑体に入る光を減らすことができます。

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    hohenbergia "Sandra's Mountain" 葉の表面に白いウロコが付いているのがわかる。
    これがトリコーム。かっちょいい。
  4. アントシアニンの合成
    アントシアニンは紫外線や強い光から身を守ってくれる、紫色の色素です。人間は日焼けすると、メラニンという黒い色素を皮膚に蓄積させることで、紫外線から身を守りますよね。植物にとってのメラニンアントシアニンっていう感じです。

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    Billbergia ''Darth Vader'' スポットの周りが明るい紫色っぽくなっているのがわかる。
    葉全体が黒っぽいのもアントシアニンの色だと思ってます。
  5. キサントフィルサイクルによる熱放散
    キサントフィルサイクルは、ビオラザンチン、アンテラザンチン、ゼアザンチンの3つのカロテノイドからなる葉緑体の防御機構です。
    弱光下では、植物体内にビオラザンチンが多くある状態です。
    光が強くなるにつれて、ビオラザンチンは、アントラザンチンに、アントラザンチンはゼアザンチンに変換されていきます。
    ゼアザンチンは水素イオンと結合し、余分な光エネルギーを熱エネルギーへと変換させます。
  6. イソプレンの合成
    これは今流行りの観葉植物には当てはまらないかもしれませんが、ナラやポプラ、クズなどの植物はイソプレンという気体の炭水化物を放出するそうです。これが高温や強光時の光合成膜の安定化に貢献するそうな。(イソプレンは俗にいうフィトンチッドの一種です。カンカン照りの日に森に入ったらがっつりフィトンチッドを感じられるということか。これはイケてますな。)

 

急に太陽の直射日光に当てるのはまずい?〜光になれさせた方がいいのか問題〜

 先に結論を言います。ズバリ慣れさせたほうがいいです!この記事を書いていて、光に慣れさせることの重要性を再確認しました。笑
思いついた方法は↓

  • 日の出から日光を当てる。(日の出すぐの光はそこまで強烈じゃないので、これで慣れてもらう。)
  • 日光に当てる前日にはたっぷり水を与えておく。(もちろん、土の保水状況を考えて。)
  • 室内でも200μmol m-2 s-1以上の光を浴びせ、キサントフィルサイクルに関連するタンパクを備えさせておく。
  • 外に出す1週間前あたりに、窒素を含む肥料を入れてやる。
    (Rubiscoの増産を手助けするため。与えすぎると水の濃度が上がり、植物が水を吸えなくなるので注意。私は3号鉢にマグァンプKの中粒を2~3個入れました。もしかしたらこれでも多いかも?)
  • 冬など、寒い日は特に気をつける。最低気温が10℃以上の日が3日間続かない限りは外に出さない。

 

※この記事を書いている途中に植物工場で働いていた友人と話をしました。彼によると、レタスをハウス栽培していた頃は夏場には肥料をあげなかったそうです。というのも夏場に肥料をあげると「チップバーン」という病気になってしまうそうです。植物は窒素と共にカルシウムも吸収するのですが、成長点付近の若葉に栄養が行き届く前に他の葉がカルシウムをすってしまうんだとか。そのせいで若葉は窒素しか吸えず、「チップバーン」にかかってしまうとのこと。うーん、植物は奥が深い!とりあえずすんごーく薄めた液肥を試してみようと思います。


 これは植物の強光対策を最大限に引き出すためのものです。どんなに慣れさせ、防御力を上げたとしても、防御力1000の植物が攻撃力2000の日光には勝てません。植物によっては遮光シートを活用したほうが良さそうです。最初に書いたように、私はビルベルギアに遮光シートを使っています。

 これらの方法は私が思いついた方法なので、本当に効果があるかわかりませんが、今後はしばらくこの方法を試していこうと思います。

参考


テイツザイガー 植物生理学

web
光合成事典
植物生理学会 みんなの広場