BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

植物生育ライトの検討1 〜理想の 波長 を考える〜

冬を考えて室内環境を整備しています。スチールラックを使って簡易温室を作ろうと思っているのですが、光源が足りないと感じています。そこで、どんなライトがいいのかを自分なりに考察してみました。

 

各波長がもたらす影響を一言でまとめてみた

 本当はめちゃめちゃ複雑で奥が深いと思うのですが、一言でまとめてみました。

赤、青・・・徒長を抑制し、葉の成長を促進。クロロフィルの吸光ピーク。

緑、赤外線・・・徒長を促進。

※ここでいう「徒長」とは、モヤシのように、茎や幹を伸ばすことにエネルギーを費やしている状態。ビザールプランツ界隈で使われる〔徒長〕とは少しニュアンスが違うかも。

緑、赤外線を浴びると徒長してしまうのは「避陰反応」という反応のせいです。

赤と青の光は、植物によって積極的に吸収されます。しかし、緑色光や赤外線の多くは、葉っぱの表面で反射されるか、葉っぱを透過してしまいます。

ある植物Aの上に背の高い別の植物Bが生えていたとしましょう。この場合、植物Bに赤や青の光が取られてしまい、植物Aは残りカスの緑色光や赤外線だけしか受け取れません。植物Aはこの状態を「日陰にいる」と認識します。ここで植物Aの体内で「避陰反応」が発動します。植物Aからしてみたら、どうせ日陰にいるので葉っぱを作ったって意味ありません。茎を伸ばすことに優先してエネルギーを使い、日向を目指そうとするのです。結果、葉はヘナチョコ、茎はヒョロヒョロのなんともかっこ悪い「徒長」状態になってしまうのです。

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徒長のしくみ

赤と青が大切なのはわかりましたが、どの割合で組み合わせたらいいのでしょうか。

赤と青の組み合わせ方で成長は変わる

長年、最適な波長の組み合わせは何なのか研究されているようです。

論文をいくつか読みましたが、ここでは、2018年のジギタリスを用いた研究*1を取り上げることにします。

この論文では、蛍光灯と赤単色、青単色のLED、赤と青を1:1、2:8、8:2の割合で配合したLEDを使って葉の枚数や葉の長さ、幅、トライコームの乗り具合、アントシアニンの蓄積など、とにかくいろいろな観点から成長の違いを調べました。

 

詳細な実験結果は確認して頂くとして、簡単にまとめると

大きく元気な植物を育てるなら赤:青(8:2)が一番。

アントシアニンを溜め込みまくり、長葉の植物にするなら青のみのLED。

トライコームガシガシの植物を作るなら、赤:青(1:1)か赤:青(2:8)のLED。

トライコームガシガシ&コンパクトな植物に育てるなら赤:青(1:1)か赤:青(2:8)のLED。

 この論文結構良くないですか? ビザールプランツを使って同じような実験やってくれ。いや、やってください_(._.)_
この傾向がすべての植物に当てはまるかどうかはわかりませんが、参考になりそうです。どんな感じに植物を育てたいかによって赤と青の配合を変えると良さそうですな。

赤:青(8:2)LEDの成長スピードはすごい!

特に赤:青(8:2)の成長は魅力的で、葉の展開スピードはすごいです。

レタスでも似た実験*2が行われており、ジギタリスと同様に、赤:青(8:2)に近いLEDでもっとも大きい葉面積を出しています。

まだあります。

ムギを用いた実験*3では、100μmol m-2 s-1の赤色LEDでクロロフィルが蓄積するのに、500μmol m-2 s-1では蓄積していませんでした。そこで500μmol m-2 s-1の赤色光と30μmol m-2 s-1の青色光を混ぜて照射してやると、クロロフィルの蓄積が増えたと報告しています。

これらのことからも、赤色光に青色光を少し混ぜる組み合わせで、成長スピードが上がる事は間違いない気がします。

ピンクLED vs 白色(フルスペクトル)LED

赤:青 (8:2) の光で生育スピードが上がると書きましたが、最近は白色(フルスペクトル)LEDが流行ってきてるような気がします。実際どうなんでしょうか?

これについて実験している動画を友人が教えてくれたので紹介します。


White LED vs Red Blue White LED Grow Test w/Time Lapse - Lettuce Ep.1

 

この動画ではレタスを白色LEDと赤青LEDで育てた時の生育の違いを調べています。

結果は、

白色LEDで生育した時の方が生重量が37%高かった。

実は赤+青色に緑を混ぜるとさらに生育が良くなることは論文*4でも報告されています。

その論文によれば、

論文では赤+青に24%まで緑の光を混ぜると生育が良くなる。

しかし、50%以上、緑を混ぜると生育が悪くなる。

出典:Photosynthesis under artificial light: the shift in primary and secondary metabolism (E.Darko et al : 2014)

と書かれています。

動画や論文から、白色(フルスペクトル)LEDの方が生育に良いことが強く示唆されます。

これ以上書くと、かなりの文字数になってしまいそうなので、「具体的にどのLEDがいいか?」については次回書こうと思います。笑

まとめ

  • どのように育てたいかによって赤色光と青色光の配合を変えた方が良い
  • 赤:青=8:2 の割合で光を当てると成長スピードがかなり上がりそう
  • 成長スピードを上げたいなら、緑色光もある程度あった方が良い

参考

【本】

L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2004)培風館

 

【論文】

*1:Enhanced growth and cardenolides production in Digitalis purpurea under the influence of different LED exposures in the plant factory  S.K.Verma et al.,2018

*2:Improving "color rendering" of LED lighting for the growth of lettuce.  T.Han et al.,2017

*3:Photosynthesis under artificial light: the shift in primary and secondary metabolism.  E.Darko et al.,2014

*4:Photosynthesis under artificial light: the shift in primary and secondary metabolism.  E.Darko et al.,2014