今年は Billbergia の年にする!と意気込み、前回から、Billbergia の育て方を模索するという記事を書いてます。
前回は、最適な光量と葉焼けの原因を考察するだけで終わってしまったので、今回は書ききれなかった理想の姿に近づけるための生育方法を考察していこうと思います。
- BBYは葉先が開いておらず、バンドやスポットが多い Billbergia を作りたい。
- 葉先が開かないようにするには、強い光を長時間照射するのがいい?
- バンドをくっきりと出すには、十分な青色光を照射するといい?
- 強い光の長時間照射はスポットを出すのにも効く?
- 考察した内容を総括すると、どんな環境になる?
- BBYが目指すBillbergiaの理想形(再掲)
- 「葉先が外に広がらずに真上を向いている」状態を作るには
- バンドがくっきり出ていて、スポットが多い。状態を作るには
- 「葉の幅が広く、先端が四角くなっている」状態を作るには
- まとめ ~本記事の環境をまとめると~
- 参考
BBYが目指すBillbergiaの理想形(再掲)
前回も書きましたが、BBYが目指す Billbergia の理想形は
- 理想の姿葉先が外に広がらずに、真上を向いている。
- バンドがくっきり出ていて、スポットが多い。
- 葉の幅が広く、先端が四角くなっている。
- 葉焼け、ダメ、絶対。
実物で言うとこんな感じ。
さあ、今回はかっこよく育てるための方法を各ポイントごとに考えていきます!
※「4.葉焼けダメ、絶対。」に関しては、前回の記事を参照してみてください。
「葉先が外に広がらずに真上を向いている」状態を作るには
結論から言うと、
「強い光の長時間照射で生育する。」
です!
こう考えた理由を以下に記述していきます。
強い光の理由
植物は光の強さに応じて形態を変えるようです。
光が弱ければ、より多くの光を受け取れるように(受光面積が大きくなるように)、
光が強ければ、あまり光を浴びないように(受光面積が小さくなるように)
葉の形や傾きを変えます。
「強光下で折り畳まれる葉」には、強光下で葉の形態を変え、受光面積を小さくしている様子が見られます。
これを Billbergia に当てはめた場合、以下のような形態の変化があると考えられます。
弱光下の場合 → 受光面積を大きくしようと、葉を外に広げる。
強光下の場合 → 受光面積を小さくしようと、葉を垂直に立てる。
これが強い光を照射する理由です。
ここでいう「強い光」とは葉焼けしないギリギリの光量です。温度や湿度などの条件が揃えば 2000 μmol m-2s-1 という高光量でもOKです。細かい考察は前回の記事を参照してみてください。
長時間照射の理由
先ほど述べたように、植物は強光下で受光面積を減らすように形状を変えます。
しかし、Billbergia の葉は硬いですよね。ツユクサなどと違い、自由に開閉することができなさそうです。
そのため、光の強さに応じて、葉を動かすのではなく、形の異なる葉を作っていると BBY は思うのです。
もちろん、葉が作られていくには時間がかかります。
「一時的に強いけど、あとは弱い光」のような環境だと、
「弱い光の時間が多いから、受光面積の大きい葉を作った方がいいな」
と考えるのではないでしょうか。
逆に、
「一時的に弱いけど、あとは強い光」なら、
受光面積の小さい葉をつくるようになる気がします。
さて、光に応じて形を変えるように成長する、という点で似ている現象に「光屈性」があります。
光屈性については研究が進んでおり、青色光の光受容体であるフォトトロピンや、オーキシン、オーキシン輸送体である PIN1 や ABCB19 などが関与していることなどが明らかとなっているようです。*1
光屈性は胚軸や茎でよく見られる現象です。茎が発達していない Billbergia にとって、光屈性のメカニズムが葉に応用されているというのは、ありえない話ではないかも?
ですが、Billbergia の葉に同じ原理を当てはめるのは少し強引な気もします。
そこで、作られる葉と光屈性の関係を調べた論文を探そうと思ったのですが、、、、。いいものを見つけられませんでした。
ウーン、、、、。せめて、この仮説を裏付ける何かが欲しい。ということで、我が家の Billbergia を紹介しようと思います。(^^)
現在、室内 LED にて生育している Billbergia が光を浴びている時間は14時間。それなりに締まった感じになっています。
さすがに14時間は長すぎだと思ってますが、照射時間は 8~12時間程度 あるといいかなと妄想します。
「強い光」を浴びせているから締まっているんじゃあないの?と言われたらその通りなのですが。まあ、大目に見てくださいm(_ _)m
バンドがくっきり出ていて、スポットが多い。状態を作るには
バンドとスポット、どちらも Billbergia の魅力を引き出す大事な存在です。この項では、これらの特徴をはっきり出すための環境について考察していきます。
バンドをくっきり出すには
この投稿を見てる方はほとんど知っていると思いますが、
バンドというのはこーゆうやつです。
この白い横線が鮮やかな葉色と組み合わさることで、より一層の美しさを生み出しています。芸術が爆発してますねぇ。せっかくなら、魅力を最大限に引き出すため、バンドをくっきりと出してやりたい。では、どうすればいいか?これについては心当たりがあります。
BBYの見立てでは、バンドはトリコーム(トライコーム)であると思われます。拡大すると、うろこ状の白いのが沢山ついているように見えます。
そして、今まで書いてきた記事をもとに考えると、トリコームを沢山作らせるには、つまり、バンドをくっきりと発現させるには青色光 or 紫外線 が有効だと考えます。こう考えるに至った記事を3つほど載せておきます。
トライコームの役割全般について調べた記事です。
良い LED を購入したい!と考えた時に、どんな波長の LED がいいのかを調べた記事です。青色の波長割合が多いライトはトリコームを多く作らせる、といった論文も簡単に紹介しています。
前々回に投稿した記事。生育記録をつけ始めてから見えてきた、Dyckia がトリコームを作る条件を考察しています。 Dyckia も Billbergia と同じブロメリアなので、この記事の内容が応用できるかもしれません。
ただ、Billbergia の場合は、UV-B のような強い紫外線は必要では無いと思います。
というのも、昨年度から AMATERAS LED で生育している小さい Billbergia 'Beadle man' は、バンドがめちゃんこ出てるんですよね。
この'Beadle man' 、AMATERAS LED の光を約10cm の距離から照射して生育しています。
波長分布だけでは青色光の詳細なエネルギー量は分かりませんが、青色光だけでもそれなりにバンドを出現させることができる、という証拠にはなるんじゃないでしょうか。
スポットを多くするには
こちらも一応説明しておくと、
スポットとは、 Billbergia の葉にできる白い斑点のようなものです。
鮮やかに発色した葉に、このスポットがあると、いいアクセントになりますね。スポットが増えると、まだら模様になって株の魅力が倍増します。SNS でスポットが沢山入った Billbergia を見かけますが、毎回心を奪われます。
スポットを沢山作らせるにはどうしたらいいものか?
正直に言うと、いまいちよく分かりません!( ˉ ˡˍˉ )
これといった証拠や推論するための情報があまりなくてですね、、、、。
ただ、1年間育てて何となく感じるのは、
「強い光を長時間照射すると、スポットが出やすい、気がする」
ということです。強引に推論を後付けするなら、
強光を長時間照射すると、
「葉緑体そんなに要らないんじゃね?」となる。
「ならば、葉緑体を維持するエネルギーが無駄じゃん!」となって、
葉緑体が分解された部分がスポットになる。
といった感じでしょうか。いずれにせよ、葉先が開かないように強光を長時間照射するので、そのおかげでスポットも増えるんじゃないかと目論んでおります。
「葉の幅が広く、先端が四角くなっている」状態を作るには
これに関しては4つの戦略があります。
- 赤色の波長が多い光を使う
- 風を当てて、葉細胞の水平方向への肥大を促進する
- 紫外線にあまり当てずに育てる
- 鉢にも灌水する
赤色の波長が多い光を使う
トリコームの時に紹介した、生育ライトの記事をもとに考えた戦略です。
赤色の波長の割合が多い光を使うと葉幅が広くなるという報告を根拠にしています。
風を当てて、葉細胞の水平方向への肥大を促進する
「長時間照射で葉先が開かなくなる」ところで触れた、Billbergia の葉は茎の性質も持っている説をもとに考えてみます。茎や幹は風をあてることで太くなることが示唆されています。
これを組み合わせると、
「Billbergia に風を当てると、葉幅が広くなる。」
となります。真偽のほどはかなり怪しいですけどね。^^;
最近では、植物に風を当てることがメジャーになってきていると感じます。おそらく多くの方が送風機やサーキュレーターを所持していると思うので、試すことの敷居は低いんじゃないかなと思います。
紫外線にあまり当てずに育てる
BBYは今まで、紫外線、特にUV-B についての記事を何度も投稿してきました。
UV-B は植物の形態形成に様々な影響を与えますが、中でも「葉の長さ、幅の減少」というものがあります。
これについては、様々な植物を育てていて実感しています。例えば Othonna euphorbioides (黒鬼城)の葉。
黒鬼城は昨年末まで室内で生育していましたが、ハダニ被害を受けてから屋外管理にしていました (当時、調子が上がらない原因がハダニだと気づかず、室内の環境が良くないと思ってたんです) 。この時は葉が大きいように見えます。
屋外管理に移行した後につけた葉は明らかに小さい!盆栽感をムンムンに放っていて、かなり気に入っています。笑
室内管理していた頃の葉(ハダニに喰われ、赤くなっている葉)が残っています。純粋に新しい葉が成長していない可能性もありますが、室内管理時の葉より、小さく感じます。
このように「UV-B が葉の長さ、幅を減少させる」というのは、BBY もかなり実感している内容です。
Billbergia の葉も同様に、UV-B の影響を受ける可能性は十分ににあると考えています。
UV-B の影響を抑えるためには、やはり遮光が良いと思います。
UV-B は単波長 (280 ~ 315 nm) の光であるため、遮蔽物に引っかかりやすい性質があります。ガラスはもちろん、市販されている透明なビニールシートでもかなりカットすることが出来るはずです。
5 ~ 8 月の太陽光が強い時期は、葉焼けを防ぐという意味でも遮光をしたほうが良いと思います。
鉢にも灌水する
これは完全にネットの情報です。笑
某オークションサイトで Billbergia を出品されている方が「鉢植えにした方が太る」と商品の説明欄で書いていました。出品できるほど美しい株を育て上げる人が言うのだから間違いないでしょう!(^^)
「鉢植えにした方が太る」ということは根からも水を吸うということでしょうか?これについてはよく議論される内容ですな。
ちなみに、BBY は「根からも水を吸う」派です。
まとめ ~本記事の環境をまとめると~
光関係
葉焼けしないギリギリの光量を最低でも8時間以上照射する。
UV-B にあまり当てないようにする。日差しが強い 5 ~ 8 月は遮光する。
灌水関係
鉢にも潅水する。
その他
風に当てる。
結局、よく見聞きする情報とあまり変わりませんね。でもいいのです。何故そうするのかを調べ、納得することに意味があると思うのです。
以上で Billbergia の育てかたを模索するシリーズでしたー。
とりあえず、ここで紹介した生育方法を試してみようと思います。冬越しの方法などについては涼しくなってから投稿しようと思います。
参考
【書籍】
L.テイツ / E.ザイガー テイツザイガー植物生理学(2017)培風館 p.534 ~ 536
【Web】
強光下で折り畳まれる葉 福岡教育大学 教育学部 福原先生のサイト。