BBYの観葉植物 Discussion Note

観葉植物の生育環境や、育てかたについて考えたことを載せるブログです。

Pachypodium inopinatum (パキポディウム イノピナツム)BBY流の育て方と生育記録 Vol. 1

Pachypodium inopinatum の生育記録です。

 

 パキポディウム イノピナツム について

キョウチクトウ科パキポディウム属の植物です。

発見された当初(1996)は『Pachypodium inopinatum』と名付けられましたが、その後の調査により『Pachypodium rosulatum var. inopinatum 』と呼ばれることもあります。*1遺伝的な系統分類でいうと、P. densiflorum や P. brevicaule ssp. leucoxanthum と近いようです。

f:id:BambooBornY:20210506171853p:plain

出典:Phylogeny of the plant genus Pachypodium(Apocynaceae) (Dylan O. Burge et al., 2013)
特徴

幹の色は白っぽいです。実際、写真左のマカイエンセよりも白く見えます。

左:パキポディウム マカイエンセ   右:パキポディウム イノピナツム

パキポディウム属は歯の付け根にトゲが密集するものが多いですが、イノピナツムは他の種に比べトゲが小さく、短いです。

トゲは控えめ。

葉はかなり細めの楕円形で、上に向かってつけます。

イノピナツムの葉。細い楕円形。

白い花を咲かせるそうですが、私のイノピナツムはまだ咲かせたことがありません。早く見てみたいものです。

自生地

イノピナツムの自生地はツァラタナナ地区 (Tsaratanana District) に限定されており(マップの赤い部分)、中でもテロミタ (Telomita) という地(マップの緑のピン)の近くに多いようです。

inopinatum is restricted localities near Tsaratanana.
出典:Rapanarivo, S.H.J.V., Lavranos, J.J., Leeuwenberg, A.J.M. and Roosli, W. 1999. Pachypodium (Apocynaceae) Taxonomy, habitats and cultivation. A.A.Balkema, Rotterdam/Brookfield. ---p.2

イノピナツムは標高 1000 ~ 1900 m にのみ自生することが知られており、1450 m 辺りに生息していることが報告されています。

inopinatum has been reported at altitudesof about 1450m. 

dwarf plants (P. brevicaule) and shrubs (such as P.eburneum and P.inopinatum) are only known from areas above 1000 and up to 1900 m. 

出典:Rapanarivo, S.H.J.V., Lavranos, J.J., Leeuwenberg, A.J.M. and Roosli, W. 1999. Pachypodium (Apocynaceae) Taxonomy, habitats and cultivation. A.A.Balkema, Rotterdam/Brookfield. ---p.93,97

自生地周辺の環境について。

気象庁に掲載されているデータのうち、「アンタナナリボ」のデータを載せます。Telomita とそこまで近くはないのですが、計測地点が、標高 1279 m と比較的高いので参考になるかなと思います。

アンタナナリボの平年値
参考:気象庁

標高が 1000 m を超えているので、平均気温は暖かい時期でも 25 ℃ 以下です。

また、降水量が 350 mm を超えている月もあり、思っているより降りますね。(ちなみに、2020年 - 千葉の7月降水量は約 400 mm です。)

Pachypodium 属の生育方針

BBYが考えるパキポディウム系の生育方針は

です。上の2つは幹を太くするための方針。 下の2つは基部の枝分かれを防ぐための方針です。

お迎え時〜2月末までの生育記録

2020年8月9日に、千葉県の大手ナーセリーから実生苗を購入しました。

マカイエンセと一緒にお迎えしました。
左:パキポディウム イノピナツム 右:パキポディウム マカイエンセ

小さくて可愛いですね。

お迎えした2020年8月から2021年2月までは、細かい記録を取っていないので、ダイジェストでお送りします。

お迎え時〜2月末までの生育記録

9月までは屋外でガンガン日光を浴びさせました。

10月から、「朝外に出して夜に屋内にとりこみ、室内で2時間程度補光する。」というのをやってました。

11月から完全に室内に移行し、LEDで管理していましたが落葉してしまいました。そのまま2月末まで室内の植物棚で管理しました。

21年3月~22年6月末までの生育記録

2021年3月から、定点撮影をして1月ごとの様子を撮影しました。気温、湿度も記録を取り、成長度合いと環境の相関があるかを調べられるようにしました。

成長まとめと幹の肥大率

21年3月 ~ 22年3月 の一年間、ずーっと室内で LED を当てて育てました。22年3月中旬から屋外で管理しています。

イノピナツム 2021年3月 ~ 2022年6月 成長の軌跡

2020年11月ごろに落葉して、2021年 3月中旬に目覚めたと思います。(詳細な記録がなくてすいません。)3月末時点では葉がある程度成長していますからね。

3月以降たくさん葉を生やしています。休眠のスイッチが入ったと思われるのは2021年11月で、3月中旬(19日)に完全に落葉しました。

 

さて、気になる幹肥大率。赤い線の長さを測定し、どのくらい太ったかを調べました。

幹肥大率(鉢の直径《青線》も測定し、実物との差を補正しています。)

3 ~ 5月は葉を生やすのにエネルギーを使っているのか、幹の肥大は見られません。

葉が出揃い始めた6月から幹の肥大が始まっています。そして、完全に落葉した2022年2月までは、肥大が続きました。

結局、2021年3月 → 2022年6月 の幹肥大率は 1.27 倍でした。

イノピナツムの成長に関して、以下のようなパターンが考えられます。

  • イノピナツムの成長が遅い
  • 我が家の環境がイノピナツムと合っていない
  • 他のパキポディウムの成長が早い

などなど。まだ確実なことは言えませんが、だからこそ妄想が捗りますね ♫

3月末
3月の詳細

環境の計測を始めたのが、3/10 からなので、それ以前のデータはないです。すいません。ちなみに屋内環境(室内の植物棚)はこんな感じです。

我が家の植物棚の風景。イノピナツムは中央から少し右側におります。

さて、3月の環境について。
パネルヒーターを使って温度を高めていますが、湿度は低いままです。

3月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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中旬に目覚めたと思います。その証拠に新葉は赤く、アントシアニンが貯まっています。

4月末
4月末の環境詳細

室内の環境も、気温と湿度が上がってきました。

4月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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この1ヶ月で一気に葉が増えました。

5月末
5月末の環境詳細

気温差が小さくなりました。もう少し湿度が高ければ理想的な環境です。

5月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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一気に展開した葉が大きく成長しました。

6月末
6月末の環境詳細

室内の気温が順調に高くなっています。

6月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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新葉の展開数は先月より減りましたが、幹の成長が始まりました。

7月末
7月の環境詳細

この月も室内管理。梅雨だったということもあり、室内も湿度が高いですね。

7月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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葉幅が広くなり、幹も順調に肥大していますね。幹の頂点付近が膨らんできました。

8月末
8月の環境詳細

7月と同様に気温・湿度が高かったです。

8月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、中心から約 10 cm
【PPFD 値(推定)】 100 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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この月だけ写真の倍率を間違えていますね。汗
幹の上部がさらに太ったように見えます。

9月末
9月の環境詳細

この月も室内で管理。相変わらずの高気温&湿度。9月といえどまだまだ暑かったです。

9月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ真下
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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この月も順調に幹が太くなりました。葉先がほんのり赤くなっているように見えます。

10月末
10月の環境詳細

この月も室内で管理。22日辺りからガクッと気温が下がりました。

10月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ真下
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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下旬の気温低下が原因でしょうか、紅葉が始まりました。

11月末
11月の環境詳細

室内管理を継続。室内とはいえ、9月 - 10月中旬までと比べ、気温が5℃近く下がっています。気温もかなり低くなってきたので、25日あたりから、パネルヒーターで加温しています。

11月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ真下
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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 パネルヒーターで加温しているにも関わらず、落葉が始まりました。一度休眠スイッチが入ってしまうと、止められないのかもしれません。(もちろん環境によると思いますが。)

12月末
12月の環境詳細

室内管理を継続。パネルヒーターを使っているため、気温差はかなり低くなっていますが、湿度もかなり下がっています。

12月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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落葉が進みましたが、まだ青々とした葉もつけているので、水やりはしていました。

2022年1月末
2022年1月の環境詳細

スムーズに目覚めさせるため、加温した植物棚から、無加温の場所に移動させました。

無加温の室内温度は5 ~ 10 ℃ 程度と「低温処理」にちょうど良さそうです。

1/28 から象印の加湿器を室内に設置しました。大きかったので植物棚内に置けなかったのですが、棚内の湿度も少し上がりました。

2022年1月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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落葉が進んでいます。青い葉も少なくなってきました。

2月末
2月の環境詳細

パネルヒーターのおかげで棚内は暖かかったですが、室内はとても寒かったです。

2022年2月の環境。日付が水色の日に水やり。

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】 AMATERAS LED 20W
【ライトとの距離】 鉢下から 40 cm、ほぼ中心
【PPFD 値(推定)】 400 μmol m-2s-1
【光照射時間】14時間 / 日
【水やり方法】幹が少し凹んできたら、鉢底から水が出るまで灌水
【その他】卓上扇風機で送風

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落葉がさらに進みました。完全休眠の時は近そうです。

3月末
3月の環境詳細

多くの葉が落ちたので、低温にさらすという意味で、3/12 から屋外管理に切り替えました。

2022年3月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2022年3月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

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3/12 に外に出し、

2022/3/12 撮影。

順調に葉を落とし、

2022/3/14 撮影。

3/19 には完全に落葉しました。

2022/3/19 撮影。

ここからしばらく休眠期間に入ります。

4月末
4月の環境詳細

徐々に暖かくなってきましたが、この月は雨が多かったです。春雨ってやつですかね。

2022年4月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2022年4月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

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いまだ休眠中。

5月末
5月の環境詳細

一気に気温が上がりました。最低気温が 15℃を超える日もしばしば。

2022年5月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2022年5月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

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絶賛休眠中。

6月末
6月の環境詳細

6日に梅雨入りしました。ただ、そこまで雨量は多くなかったです。24日からはかなりの高温が続きました。しかも27日には梅雨明け。

2022年6月の環境。日付が水色の日に水やり、もしくは雨ざらし。緑色の網掛けは室内管理している日。

2022年6月の日照時間と1日の合計降水量

〜〜〜その他の屋内環境情報〜〜〜

【使用LEDライト】午前中のみガラス越しの日光、蛍光灯
【ライトとの距離】 -
【PPFD 値(推定)】 -
【光照射時間】-
【その他】-

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休眠中。

ちなみに、7月に目覚めました。

2022/7/20 撮影。

参考

【論文】

Phylogeny of the plant genus Pachypodium(Apocynaceae) (Dylan O. Burge et al., 2013) 

Rapanarivo, S.H.J.V., Lavranos, J.J., Leeuwenberg, A.J.M. and Roosli, W. 1999. Pachypodium (Apocynaceae) Taxonomy, habitats and cultivation. A.A.Balkema, Rotterdam/Brookfield.

 

*1:Rapanarivo, S.H.J.V., Lavranos, J.J., Leeuwenberg, A.J.M. and Roosli, W. 1999. Pachypodium (Apocynaceae) Taxonomy, habitats and cultivation. A.A.Balkema, Rotterdam/Brookfield. ---p.42